日本商工会議所は10月31日、10月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果を発表した。10月の全産業合計の業況DIは、9月から4・1ポイント悪化のマイナス24・1となった。調査期間は10月15~21日。全国338商工会議所の会員企業2011社から回答を得た。
10月の調査結果では、根強い消費者の節約志向が続く中、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減により、小売業の売り上げが落ち込んだ。また、一部の地域ではラグビーワールドカップに伴いインバウンドを含む観光需要が好調に推移した一方、台風19号の影響による旅行客のキャンセルや客足減少、交通網の寸断、生産活動・物流面への影響を指摘する声も聞かれた。深刻な人手不足や最低賃金引き上げによる人件費の上昇に加え、米中貿易摩擦や世界経済の先行き不透明感が広く業況の押し下げ要因となっており、中小企業の景況感には鈍さが見られる。
ヒアリングした企業からは、「ラグビーワールドカップや地元のプロ野球チームのクライマックスシリーズ進出による盛り上がりの恩恵を受け、売り上げは増加」(食料品製造)、「地元がラグビーワールドカップの開催地となったため、インバウンドを含め、ワールドカップ関連の観光客は増加」(宿泊)といったワールドカップ開催による好影響の声が寄せられた。一方で、「8月以降は前年同月比1・5倍以上の売り上げを記録し、駆け込み需要が盛り上がったが、今月は反動減により売り上げが伸び悩んでいる」(家具小売)、「技術職や下請け企業の人手不足は深刻であり、受注調整をせざるを得ない状況は変わらず、消費税率引き上げ後の状況と併せて注視していきたい」(一般工事)といった駆け込み需要の反動減や人手不足の影響を訴える声も聞かれた。
先行きについては、先行き見通しDIは、10月比マイナス2・4ポイントのマイナス26・5となった。個人消費の拡大やインバウンドを含む秋の観光需要拡大への期待感がうかがえる。一方、消費税引き上げの影響や最低賃金を含め人件費の上昇や受注機会の損失など人手不足の深刻化、原材料費の上昇、コスト増加分の価格転嫁の遅れ、貿易摩擦や世界経済の動向、日韓情勢の行方など不透明感が増す中、中小企業の業況感は慎重な見方が続いている。
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