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年頭所感 持続的成長さらに後押し 日本商工会議所会頭 三村 明夫

三村明夫会頭

明けましておめでとうございます。

2020年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。

私は、昨年11月の臨時会員総会において、各地商工会議所の皆様のご推挙を得て日本商工会議所会頭に再任され、日商会頭として3期目の新年を迎えることとなりました。各地の皆様におかれましても新体制の下、清々しく新年をお迎えになられたことと存じます。

さて、昨年は国内外ともに実に多くの動きがありました。

わが国では30年ぶりの御代替わりを経て「令和」時代の幕が開き、大変な盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ、5年ぶりの消費税率引き上げ等、重要な出来事が相次ぎました。一方で、台風等の自然災害による被害も広範囲かつ甚大なものとなり、いまだ影響の残る被災地の皆様には、改めて心からお見舞いを申しあげたいと思います。

世界では、長期化する米中対立、不安定な中東情勢、ブレグジット問題、香港問題、日韓関係の悪化等、数々の混乱が生じ、その出口を模索し続けた1年でありました。

わが国の経済情勢に目を転じれば、個人消費にはいまだ力強さを欠くものの、米中摩擦等の影響もこれまでのところ限定的であり、民間投資は引き続き底堅く、日本経済は潜在成長率並みの1%程度の緩やかな拡大を続けています。本年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、東京および全国各地の魅力とともに、東日本大震災等から復興した日本の姿を、全世界にアピールできる絶好の機会であり、ぜひともこのビッグイベントによる効果を全国津々浦々に波及させ、日本全体が元気になれる1年になることを切に願っております。

一方、わが国経済は多くの課題も抱えております。人口減少や高齢化等の日本社会の構造変化を背景に、年々深刻化する人手不足、経営者の高齢化等による廃業の増加、地方の疲弊等が、日本経済のさらなる成長の足かせになっております。これら日本の抱える構造的課題は、立場の弱い中小企業の経営課題として最も早く顕在化してきており、大企業との利益率格差は年々拡大し、また賃金も毎年上昇する中で、労働分配率は大企業の40%台に対し、中小企業では70%台に達しています。従って、生産性の向上や取引価格の適正化等を通じた付加価値の向上なくして、中小企業はこれからの時代を生き抜くことはできません。

こうした危機感の下、私は昨年11月、会頭再任時の所信において「中小企業の強化を通じて日本の成長する力を育てる」「地域の活性化」を活動の二本柱とする今期の取り組みを表明いたしました。

中小企業はわが国経済の基盤であります。日本全体の雇用の約7割、付加価値の約5割を生み出している中小企業の強化なくして、わが国の持続的な経済成長はあり得ません。所信では、①ひっ迫する人手不足とデジタル社会の到来にあって、いまだ「発火点」に達していない中小企業への「IT導入」と「デジタル技術の実装化」を急ぎ、生産性向上と付加価値向上を同時に実現すること、②来る「大事業承継時代」を変革と創造の好機と捉え、「事業承継の加速化」で価値ある事業と技術を次世代へ承継し、「起業・創業の活性化」でビジネス全体の新陳代謝を促すこと、③取引価格の適正化とともに、中小企業の生産性向上を大企業が積極的に支援する「大企業と中小企業の新しい共存共栄関係の構築」により、サプライチェーン全体をより強固なものにしていくこと、をわが国経済全体の発展・強化のための最重要の取り組みとして掲げています。

また、「地域の活性化」では、各地域がその魅力を活かし、他地域とも連携して所得向上に取り組まねばなりません。地域横断での広域連携を軸とした「観光振興」と「農商工連携」をさらに推し進め、地域の独自資源を最大限に活用して、インバウンドも含めた域外需要を取り込んでいく必要があります。また、観光振興や地方創生の取り組みを支え、これを加速化するストック効果の高い社会資本整備や、近年頻発する大規模自然災害に耐え得る国土強靭化についても、引き続き政府に対して積極的な働き掛けを行ってまいります。

これらの目標を実現させる上で、われわれ商工会議所は本年も「現場主義」と「双方向主義」をさらに徹底し、現場の声を、各種の規制・制度改革、持続可能な全世代型社会保障制度の構築、中小企業対策等を実現する政策提言に活かしてまいりたいと思います。商工会議所の強みは、全国515商工会議所、124万会員のネットワークを通じて、具体的・個別的な課題をはっきりと認識していることです。その強みを活かし、それぞれの地域で必要とされ、選ばれる組織であり続けるためには、地域の多様な主体と連携協働を図りつつ、商工会議所自身も、時代の要請に合った進化と変革を遂げていかねばなりません。

折しも、商工会議所の創始者である渋沢栄一翁が、2021年のNHK大河ドラマの主人公や、新1万円札の顔となることが決定しました。「企業は利益を上げなければならないと同時に、公益についても考えなければならない。両者は高い次元で両立する」という渋沢翁の理念は、商工会議所の活動理念そのものであり、現代においてこそ広める価値があるものと考えます。この機に渋沢翁の理念を改めて共有し、大企業と中小企業、都市と地方が共に輝き、日本経済の持続的成長をさらに後押しできるよう、本年も皆様と共に全力を尽くして取り組む所存であります。