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変化の波を新たな成長へ 年頭所感 自ら果敢に挑戦すべき時 

日本商工会議所 会頭 三村 明夫

明けましておめでとうございます。

平成31年の新春を迎え、謹んでお喜び申しあげます。

各地商工会議所の皆さまにおかれましては、各地域の経済の発展、また日本商工会議所の諸事業に対して、日頃から一方ならぬご支援・ご協力を賜り、年頭に当たり厚く御礼申しあげます。

世界経済は、IMFによれば、2018年の経済成長率はプラス3.7%を維持するものの、2019年の見通しはプラス3.9%からプラス3.7%に下方修正されました。これは、主に米国トランプ政権の保護主義的な貿易政策が、米中貿易摩擦などの形で徐々に具体化してきたことなどを反映したものであり、貿易摩擦が今後さらに過激化すれば、さらなる下方修正リスクもないとは言い切れません。

米中貿易摩擦は、今後交渉の中で部分的な妥協はあり得るのかもしれませんが、単なる貿易摩擦ではなく、安全保障を含めた最新技術の主導権争いに端を発した米中間の覇権争いと捉えるべきであり、従って長く続くことを覚悟すべきだと思います。われわれ経済人は、そのような状況の中でどのように生き残っていくべきかを模索していく必要があります。

一方、トランプ政権の極めて不安定な政策は、日本に主体的な対応を求めています。米国がTPPからの離脱を決めた後、日本が国際社会で初めて主導的な役割を果たして、残った国々でTPP11を成立させることができ、昨年末には無事発効いたしました。日EU・EPAも、トランプ政権の動きを見てEUが急に熱心となり、署名を経て、日欧の議会において昨年末承認されました。日中関係も中国側の態度に変化があり、両国首脳の相互往来を経て、新たな次元での関係強化が確認された年となりました。

わが国の国内情勢に目を転じれば、依然として個人消費に力強さを欠くものの、経済が引き続き緩やかな拡大傾向を続ける中で、需給ギャップも一昨年よりプラスに転じ、賃金も上昇を続けており、もはやデフレではない状況に達したといえます。今こそ、人手不足・少子高齢化・低い生産性・地方の疲弊など、わが国の構造的課題の解決に向け、生産性の向上などのサプライサイドの経済政策を推し進めるとともに、社会保障の持続可能性の向上と財政健全化にも取り組むべきであります。

昨年秋には安倍総理の3選も決まり、世界に誇るべき安定的な政権運営基盤が整いました。是非ともアベノミクスをステージアップさせ、「足元の安心」から「将来の安心」により軸足を移した経済財政政策の検討と推進を望みたいと思います。

内外情勢がこのように大きく変化する中、民間企業も自己変革に取り組まねばなりません。深刻化する人手不足にどう対応していくのか、AI・IoTなどの第4次産業革命における技術革新をどのように活用して自らの生産性を高めていくのか、海外市場を自らの成長にどう結びつけていけばよいのか。不確実・不透明な時代であるからこそ、企業経営者は目の前の課題をむしろチャンスとして前向きに捉え、自ら果敢に挑戦すべき時を迎えています。

そうした中、われわれ商工会議所は、地域の経営者に寄り添いながら、変化の波を新たな成長へとつなげていく動きを後押しする使命があります。まさに、企業の発展が地域経済社会の発展につながり、そして日本全体の発展につながっていくべきであり、商工会議所創立から140年を経た今こそ、渋沢栄一翁が述べた「公益と私益の両立」の原点に立ち返り、自覚も新たに活動すべきであります。

私もまた、「中小企業に日本の課題が最も早く押し寄せる故に、中小企業の課題を解決することが日本経済の成長に直結するものだ」との信念の下、本年、商工会議所が取り組むべきものとして、以下の課題を掲げ、重点的に取り組んでまいりたいと思います。

1点目は、「人手不足への対応と生産性向上」に向けた取り組みです。人手不足が中小企業の最大の経営課題となっている今、人材の確保・定着や生産性の向上に最優先に取り組まなくてはなりません。女性・高齢者・外国人など、多様な人材の活用とともに、業務運営の見直しも含めた働き方改革の推進や、ⅠT・IoT、ロボット、AIなど革新的技術の活用を通じて生産性の向上を図っていく必要があります。日本の全企業数の99・7%を占める中小企業の生産性向上なくして、わが国全体の生産性向上と持続的成長は不可能です。商工会議所としても、経営者の「気づき」を促し、身の丈に合った形でIT・IoTやAIを身近な経営改善に活用いただけるよう、すそ野の広い支援事業を積極的に展開してまいります。

2点目は、「中小企業の活力強化と地方創生」への取り組みです。経営者の高齢化や後継者不足により、地域経済の基盤である中小企業の廃業数は増加を続けています。昨年、事業承継税制が抜本拡充されたことをテコに、円滑な事業承継を支援し、価値ある事業の存続を図るとともに、新たな創業も促していかなくてはなりません。地域において中核となる企業の存続と新たな創業は、そのまま地域の活性化とわが国の成長につながる極めて重要な課題です。商工会議所は、国の支援施策もフル活用させていただき、地方銀行などの協力も得ながら、引き続き円滑な事業承継、創業支援に取り組んでまいります。また、農商工連携、地域資源を活用した観光振興、中小企業の海外展開など、域外需要の獲得と真の地方創生に向けてさらに取り組みを強化してまいります。

特に本年は、日本が議長国を務めるG20サミットやラグビーワールドカップが予定されており、また2020年には、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックの開催を迎えるなど、世界的なビッグイベントが続きます。これらは、わが国の魅力を世界にアピールする絶好の機会であり、インバウンドのみならず国内観光を含めた観光振興により、地域活性化に尽力してまいりたいと思います。

3点目は、2019年10月1日に予定されている「消費税率引き上げ」への対応です。消費税率引き上げ前後の需要変動に対する平準化対策に関しては、取引価格への円滑な価格転嫁が大前提であり、そのためには中小事業者への十分な配慮と支援が必要です。また軽減税率に関しては、導入まで残り1年を切っている中で、昨年9月時点での日商の調査によると、多くの事業者が未だ準備に取り掛かっていない状況が明らかになりました。軽減税率は日本として初めての経験となりますので、一刻も早く準備を進めることが必要です。これまでも多くの商工会議所で説明会・相談会を実施してきましたが、引き続き国との連携を密にし、広報活動や事業者からの相談などに取り組み、事業者の円滑な対応を支援してまいります。

最後に、今春には天皇陛下がご譲位され、「平成」が終わり新しい時代の幕開けとなります。日本商工会議所は「未来を拓く商工会議所」として、全国515商工会議所のみならず、青年部、女性会との連携も今まで以上に強化し、前述の課題解決に尽力するとともに、企業、地域、ひいては日本経済の持続的成長の実現に向けて全力で取り組んでまいります。