海の幸を食べてもらうために
福島県の西部、江戸時代は会津藩の城下町として栄えた会津若松市に、会津郷土料理を提供する店、渋川問屋はある。創業は明治15(1882)年で、初代・渋川善太郎が海産物問屋を始めた。それを料理店として新たにスタートさせたのが、四代目の渋川惠男(ともお)さんである。 「会津は太平洋側と日本海側の真ん中にあり、冷蔵庫のない時代は新鮮な海産物が手に入らなかった。そこで江戸時代は、北海道から来た北前船が新潟で陸揚げした干物を会津まで川で運んでいました。特に身欠きニシンと棒ダラ、貝柱の干物の三つは、会津の三大乾物として珍重されていました。初代は海の幸を地元の人に食べてもらうため、それらを取り扱う商売を始めたのです」
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