日本商工会議所は4月15日、「持続可能な社会保障制度の構築に向けた意見」を取りまとめ、安倍晋三首相をはじめ、全世代型社会保障検討会議のメンバーなど、関係各方面に提出した。
少子高齢化により人口構造が大きく変化したことに伴い、社会保障制度を支えるために現役世代や企業が負担する社会保険料は賃金を上回るペースで上昇し続けている。これにより、個人消費の低迷や企業の投資意欲の減退など、あらゆる課題も引き起こしている。
このため、同意見書では、持続可能な社会保障制度の構築に向け、政府が取り組むべき改革項目をまとめた。
社会保障制度改革に向けては、①世代間の公平性確保、②高所得の高齢者の負担増、③現役世代や企業にかかる負担の抑制、④小さなリスクには「自助」で対応するという生き方・暮らし方の推進の四つを基本的な考え方とする必要がある。
各分野で取り組むべき改革項目としては、医療分野では、後期高齢者(75歳以上)の窓口負担割合の原則2割への引き上げ、いわゆる〝ワンコイン型〟の受診時定額負担の導入、薬剤の保険給付範囲の見直し、マイナンバーカードやICTを活用した多重投薬や重複診療の抑制、高齢者医療制度への拠出金の在り方の見直し、健康経営の普及・促進、小さなリスクには「自助」で対応するという生き方・暮らし方の意識醸成、医師・診療科目などの偏在是正、健康・医療産業の成長力強化を挙げる。
介護分野では、介護サービスの利用者負担の引き上げ、ケアマネジメントにおける利用者負担の検討、軽度者に対する生活援助サービスの地域支援事業への移行、介護分野における規制緩和・手続き簡素化。
年金分野では、マクロ経済スライドにおける名目下限措置の撤廃、高所得者の基礎年金(国庫負担分)の段階的な減額、私的年金の普及・拡大、第3号被保険者制度の抜本的見直し、さらに保険料の未納対策に取り組むべきとしている。
社会保障制度改革を進める上で、女性、高齢者、外国人など、多様な人材が活躍できる環境整備や少子化対策など、制度の〝支え手〟である労働力人口を増やすことが必要。社会保障制度改革のプロセスや内容の〝見える化〟、「社会保障教育」などの実施、高額新薬・高額医療や終末期医療などについて、どこまで社会保障制度でカバーするのかの国民的議論が不可欠としている。
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