まちづくりの核として期待高まる
スタジアム・アリーナの新規開業がビジネスチャンスとして大きな話題となる時代になりました。代表的な施設が、長崎スタジアムシティやエスコンフィールド(北海道)。その経済効果は1年で数百億円規模になるとのことです。当然ながら二つの施設だけでなく、今後も全国で新規開業が予定されており、大きな経済効果が期待されています。
これまでは、スタジアム・アリーナは赤字を生み出すもの。行政の負担がなければ運営は難しいと考えられていましたので、状況が一変したということになります。どうして一変したのでしょうか?
おそらく、二つの背景からではないでしょうか。一つ目がスポーツリーグの拡大です。野球だけでなくバスケや卓球、バレーなどスポーツリーグが全国各地にチームを展開。ファンにとっても素晴らしい施設でチームを応援すれば盛り上がりますし、チケット代が多少は高くても価値を感じてくれます。二つ目がまちづくりや地域活性化の核として国や行政が「多様な世代が集う交流拠点」にすることを重視したことです。つまり、スポーツを行う空間だけでなく、見ること・楽しむことを重視して開発が行われるようになったのです。
にぎわい維持する取り組み参考に
結果として、音響とか客席の充実に加えて、周辺にホテルや商業施設を併設。チームの試合をゆったりと観戦できるばかりでなく、試合がない日でも人が集まるような仕掛けが施されたスタジアム・アリーナが開発されるようになりました。 おそらく、同様のコンセプトで全国各地の新規開業が続くことでしょう。ただ、前述した二つの施設は話題性も高いですが、投資コストも大きく、全国各地で同じような規模の開業ができるとは限りません。もう少しコンパクトな成功例も参考にして取り組んでみるべきでしょう。
例えば、アリーナ立川立飛(たちひ)(東京都)は約3000人程度の収容能力を持つアリーナです。Bリーグ(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)の試合のホームアリーナとして、シーズン中約25試合が行われます。それに加えて、ファンミーティングなど、独自のイベントやフットサル、卓球などのスポーツイベントを開催。まちのにぎわいの中心として収益化も実現しつつあります。
ちなみに立川市は東京都内ですが、人口18万人で、人口減少の進むまち。それでも十分に収益が取れるため、構造を単純化・標準化して、最長50年使用可能なローコストアリーナとして施工されました。収益ラインを下げる工夫やホテルやオフィスの新設で複合的な施設に向けた再開発も計画中。持続的なにぎわいを維持する取り組みは、大いに参考になると思います。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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