日本商工会議所は7月17日、「2026年度中小企業・地域活性化施策に関する要望」を取りまとめ、公表した。要望書は、全国の商工会議所を通じて寄せられた現場の声や要望などを取りまとめたもの。同日には、立野純三中小企業委員長(大阪・副会頭)が中小企業庁の山下隆一長官に要望書を手交した。中小企業・小規模事業者の賃上げや投資の原資確保に向けた付加価値の創出・拡大などのため、民間の挑戦を後押しする具体的施策の迅速な実行と必要な予算措置などを強く求めた。
要望書では、わが国が成長型経済への移行と経済好循環を実現する原動力は「中小企業・小規模事業者の収益改善、従業員などの所得向上」と「地域経済の再活性化」であるとの認識を示した一方で、地域中小企業の多くが人手不足に起因する労務費の増加などに直面し、業況の二極化が顕在化している現状を指摘。政府には、賃上げや投資の原資確保に向けた付加価値の創出・拡大や、取引適正化に向けたビジネス環境整備の強力な推進などを要望した。
また、米国関税措置への対応については、関税措置の適用除外などに向けた粘り強い交渉への取り組みや、サプライチェーンを構成する中小企業・小規模事業者に必要な支援を迅速に講じることなどを求めた。
具体的な要望項目としては、①人手不足などに直面する中小企業などの付加価値拡大への挑戦支援②価格転嫁など、取引適正化に向けたビジネス環境整備③地域への投資拡大など、地域経済の再活性化支援――の3本柱を提示。①では、成長志向型の中小企業などへの支援として、生産性向上・イノベーション創出に向けた補助金や税制の延長・拡充などを要望したほか、中小企業の人材確保・定着・育成に向けた支援などを求めた。
②では、事業者の予見可能性を高めるため、中小受託取引適正化法(改正下請法)の幅広い周知を求めたほか、「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業に対するインセンティブの拡充などを要望。また、社会全体での価格転嫁の商習慣化定着に向け、メディアを活用した「良いモノやサービスには値が付く」といった認識の周知・啓発などを求めた。
③では、「地域に新たな人流や投資、消費を呼び込むためには、地域の『稼ぐ力』を高めることが不可欠」との認識の下、民間主導・公民共創によるまちづくり体制の強化に向けた支援や、観光産業の成長産業化を見据えた施策の強化などを要望した。
要望書を受け取った山下長官は、「要望に記載されている項目は、政府が進めようとしている施策の方向性と合致している。ぜひ協力しながら取り組んでいきたい」と述べ、要望書の方向性に理解を示した。米国との関税交渉については、「日本の自動車などの輸出を続けられることが重要。生産体制を米国に移すより、日本で生産する機能を持ち続けてほしい」と述べるとともに、「国内で頑張る事業者を応援する支援策を準備し、適切なタイミングで実行していく」との考えを表明した。