日本商工会議所と全国商工会議所女性会連合会(全商女性連)は9月、「第18回女性起業家大賞」の受賞者11人を発表した。受賞者の企業は、女性目線によるきめ細やかなサービスや自身の経験に基づく困りごとの解決策などを、創造と革新から生まれたアイデアを生かしてビジネスに結び付けている点などが評価された。特集では、受賞者と同企業の事業内容などを紹介する。
女性起業家大賞とは
女性経営者などを会員とする各地商工会議所女性会の連合体である「全国商工会議所女性会連合会」(日本商工会議所の定款に位置付けられた全国組織)が、2002年から実施している顕彰事業。創業5年未満の女性経営者を「スタートアップ部門(創業5年未満)」と「グロース部門(創業5年以上10年未満)」の2分野で募集し、表彰する。
最優秀賞
社名
株式会社ミスコンシャス
代表者
小山絵実 代表取締役社長
創業年
2012年(グロース部門)
事業概要
衣装レンタル業(ドレス、アクセサリーのレンタル業・ウェブメディア事業)
所在地
愛知県蒲郡市
主な受賞理由
○ミスインターナショナルという大舞台で1枚のドレスをまとい、着飾ることの素晴らしさを知った自身の経験を生かし、「すべての女性に『着飾る』よろこびを」を経営理念に掲げ、完全オンライン化のレンタルドレスサービスを展開。
○3万7千件以上のレビューやスタッフの詳細な着用コメントの掲載、専門スタイリストによる電話・メールでの商品相談により、オンラインレンタルの障壁である「試着不可」の不安を払拭(ふっしょく)した。また、レンタル品質維持のため、社内検品を3回通過させたドレスしか提供しないこだわりや、2カ月に一度新商品を追加する工夫、さらに愛知県蒲郡市という、ほぼ全ての地域に翌日配送が可能である立地の強みも生かし、顧客満足度96%、延べ利用者数12万人以上を誇る。
○有給休暇取得率100%、残業0時間、社内キッズルームの併設、ワークシェアリング方式の採用など、女性をはじめ誰もが働きやすい環境を整備することで、人材不足が深刻な愛知県において、パート・アルバイトの採用倍率は20倍超。
○半年ごとに社内競技「おしゃコンカップ」を開催し、時給アップの機会を設けることで、社員のモチベーション向上・スキルアップに努めている。さらに「誰でも頑張れば輝ける」という成功体験を実感させる場として、人材育成にも役立っている。
○従来の店舗型が抱える問題解決のために完全オンライン化を実現すると同時に、オンライン型の懸念点を払拭する工夫を凝らしたこと、労働環境の整備による優秀な人材確保と育成を通じ、優良企業へと成長していることを高く評価。
優秀
グロース部門(創業5年以上10年未満)
社名
株式会社洗心
代表者
露木里恵 代表取締役
創業年
2009年
事業概要
介護・医療・福祉業(訪問看護ステーション・居宅介護事業所・医療的ケア児デイサービスの運営)
所在地
山梨県甲府市
主な受賞理由
○長年の訪問看護師の経験と実績を生かし、訪問看護ステーションを開設。利用者の満足度を上げるため、看護師が訪問先の情報や訪問履歴に容易にアクセスできる独自システムを構築。属人的対応にならないようサービスを平準化するとともに、緊急時にも30分以内で対応できる体制を整備している。また、介護に必要な地域コミュニティーを確立するため、オープンキッチンのカフェや料理教室などを開催できるレンタルスペースを併設した「暮らしの保健室 晴ればれ」を開設し、気軽に立ち寄れ相談できる場を提供している。
○住み慣れた家で家族と希望を持って暮らす、最後まで自分らしく暮らし続けたいという高齢者の願いを実現し、地域包括ケアを推進していることを評価。
優秀賞
スタートアップ部門(創業5年未満)
社名
SAY株式会社
代表者
藤井治子 代表取締役
創業年
2015年
事業概要
サービス業・ヘルスケア関連事業(バレエを活用した中高年女性のための健康づくり事業)
所在地
大阪府大阪市
主な受賞理由
○「バレエで健康づくり」をテーマとして、中高年向けにバレエを活用した健康づくりの運動プログラムを開発。関西拠点、生徒数150人、認定講師11人と幅広く展開している。
○医師が監修した運動プログラムの実践により、姿勢矯正効果・体幹筋力強化効果が着実に表れている。将来的には、医療・介護業界のリハビリプログラムへの活用をはじめ、自治体、スポーツメーカー、美容業界など多方面での展開が期待できる。
○他に類を見ない独創的な発想による起業と、世の中の健康志向の高まりに注目し、ターゲット層を絞り込むことで効率的に事業展開していることを評価。
奨励賞(4社)
スタートアップ部門(創業5年未満)
社名
株式会社ブリジック
代表者
木村由貴子 代表取締役
創業年
2014年
事業概要
サービス業(翻訳・通訳、語学研修、人材派遣)
所在地
栃木県矢板市
主な受賞理由
○「異文化コミュニケーションの架け橋となり、産業のグローバル化に貢献したい」という思いから起業。翻訳・通訳事業のほか、栃木県内の工業団地内にある技術系企業をメインターゲットに、英語学習とそれを生かすためのコミュニケーションスキルを同時に学ぶ「ハイブリッド式企業内研修」事業を展開。また、高い能力を有しながらも出産により離職した女性の社会復帰支援・人材派遣事業にも注力し、企業との交渉により通常の派遣形態とは異なる短時間・高効率な働き方を実現させた。
○東京2020大会の開催で日本製品・サービスに注目が集まることや、社会的ニーズの高まりを好機と捉え、事業展開していることを評価。
社名
花れんこん
代表者
齋藤住子 代表
創業年
2015年
事業概要
製造・小売・食品加工業(地域の特産物をデザインすることによるブランド化、商品開発と製造、販売)
所在地
徳島県鳴門市
主な受賞理由
○徳島県・鳴門れんこんを活用した「花れんこんのピクルス」を開発。県内8カ所の土産品店・ホテルで取り扱われており、さらにANA国際線ビジネスクラスの機内食にも採用されている。
○地域の小規模事業者と連携し、零細企業にスポットを当て商品やサービスの魅力を発信するための商社を立ち上げるなど、多岐にわたる活動を展開。
○ANA機内食総選挙2018で新商品「徳島県フィッシュカツと蓮根カレー」が1位となったほか、19年度には郵便局の母の日ギフトに花れんこん箱入セットが採用されるなど、人気商品を基に着実に事業を発展させていることを評価。
グロース部門(創業5年以上10年未満)
社名
株式会社Capybara
代表者
野々村恵 代表取締役
創業年
2013年
事業概要
サービス業(事務代行、経理代行、秘書代行、ECサイト代行、講演会およびセミナーの開催・企画・運営など)
所在地
東京都港区
主な受賞理由
○子どもを保育園に入れることができないために働くことがかなわず、「働きたい」「世の中と関わっていきたい」と望んでいる子育て世代の女性の働く環境を整備するため、企業からアウトソーシングされた仕事を提供し、家にいながら仕事をしてもらう「ママ職」を展開。現在、登録している約2800人の育児中のママたちの活躍を後押ししている。○企業の「今これをお願いしたい」といった多種多様な事務代行をフレキシブルに実現し、内助の功を提供していることや、待機児童問題や人手不足の改善に寄与していることを評価。
社名
株式会社グラディア
代表者
森本麻紀 代表取締役
創業年
2009年
事業概要
飲食業(飲食業、飲食コンサルタント業、加工品事業)
所在地
高知県高知市
主な受賞理由
○自動車販売店の片隅から始めた小さなカフェで、高知県産のカツオやピーマンなど8種類の食材を贅沢に使用したご当地「龍馬バーガー」を開発し、中心市街地にカフェバー「5019(ゴーイング)PREMIUMFACTORY」を開店。離職率が高く、3Kといわれる飲食業で従業員がやりがいを持てるよう「お客さまと仲間の笑顔のために」を経営理念に事業展開している。出店先は国内大都市ではなく、香港。海外進出を機に高知日本香港協会や高知県人会本部と連携し、香港在住の高知県人や事業家との橋渡しも担う。
○WAGYU(和牛)の日本ブランドの高品質への信頼、標準的なサービスの質の高さを武器に香港に進出するなど、店名に込めた5019(ゴーイング)にふさわしい活躍を評価。
特別賞(4社)
スタートアップ部門(創業5年未満)
社名
一般社団法人ヘルスケアマネジメント協会
代表者
振本恵子 代表理事
創業年
2016年
事業概要
健康経営支援業(健康経営管理体制の整備と導入支援など)
所在地
広島県広島市
主な受賞理由
○看護師・看護教員としての勤務経験を生かし、健康経営に取り組みたい企業に「健康経営コンサルタントサービス」を提供。健康のプロである看護師・保健師を「健康経営コンサルタント」として派遣し、労働衛生に基づくプログラム策定から教育研修の実施、担当者への助言・指導を行い、利用企業社員の健康維持と、持続可能な企業経営に貢献。
○健康に関する専門家をはじめ、弁護士や保険会社という多業種間ネットワークを構築し、高付加価値のサービスを提供していることを評価。
社名
Babydoor株式会社
代表者
中川阿美 代表取締役
創業年
2017年
事業概要
小売業・飲食業(ベビー用品レンタル・販売、ベビーカーシェアリングサービス、カフェ事業)
所在地
東京都豊島区
主な受賞理由
○新卒入社の会社で培ったプロモーションなどの実務経験を生かし、「ママ・パパそして赤ちゃんの暮らしをより豊かに」という思いから起業。①実店舗で商品を試してから契約できるベビー用品レンタル・販売、②ベビーカーシェアリングサービス、③オムツ替え・ベビーチェアを併設したママ向けのカフェ事業を柱として事業展開している。
○拡大するシェアリングサービス市場において独自性・優位性を保っていること、3事業に関連性を持たせ、顧客の相互送客・新規獲得につなげていることを評価。
グロース部門(創業5年以上10年未満)
社名
パレスチナ・アマル
代表者
北村記世実 代表
創業年
2013年
事業概要
小売業(パレスチナ伝統工芸品の輸入販売)
所在地
滋賀県草津市
主な受賞理由
○国連UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)のパレスチナ刺しゅうプロジェクト「Sulafa」の刺しゅう製品、旧式の日本製織機でつくられている織物「ラスト・カフィーヤ®」の販売を通じて社会的に立場が弱いガザの難民女性たち300人が生計を立てられるように支援。
○約150種類のモチーフがあるパレスチナ刺しゅうはつくり手である現地女性たちの誇りであり、日本人のニーズに合わせて独自の商品開発を行い、雇用を生み出している。
○刺しゅう製品をオンラインストアや百貨店での販売を通じ、パレスチナの伝統や文化を広めるほか現地の生産者の経済的自立を支援していることを評価。
社名
株式会社言語生活サポートセンター
代表者
園田尚美 代表取締役
創業年
2013年
事業概要
社会保険・社会福祉・介護事業、通所介護事業など
所在地
東京都杉並区
主な受賞理由
○自身の家族が脳梗塞の後遺症で失語症を患った際、地域に機能訓練・リハビリテーション施設が存在せず、施設の必要性を痛感。言語聴覚士が行う失語症に特化した生活機能訓練施設を開設し、デイサービスを開始した。言語訓練は、個別訓練と並行し、社会参加に不可欠な集団の中でのコミュニケーション訓練を実施するほか、失語症の特徴や生活環境などを踏まえたオリジナルの教材を使用し、日常生活への適応訓練も実施している。
○失語症の症状改善には長期の時間を要するが、リハビリにより社会復帰を希望している多くの失語症者から信頼を受け、サポートしていることを評価。
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