経済産業省はこのほど、2021年版の通商白書を取りまとめ、閣議配布した。白書では、ウィズコロナ時代における通商政策が前提とすべき国際潮流などについて「政府の経済面における役割の拡大」「各国における経済安全保障の強化」「国際経済活動における環境・人権などの共通価値への関心の高まり」「ビジネスのデジタル化」の四つのポイントを提示。現在、世界経済の回復局面で生じている課題に対応できるよう自由貿易体制を更新する必要性を訴えている。
白書では、通商政策の前提となる国際潮流について、まず、政府の経済面における役割の拡大を指摘。コロナ危機への効果的な対処を可能とするデジタル社会の早期実現に向けた政府の主体的関与や、カーボンニュートラルの実現に向けた民間投資促進のための明確な方針や支援策の提示などの政府の役割が重要になっているとの見方を示した。
サプライチェーンの強靭(きょうじん)化の観点も含めた経済安全保障の強化に取り組む主要国の動きに注目し、先端技術の開発・育成・管理などでも有志国による連携を模索する動きが広がっており、企業の事業戦略は、各国の外交的立ち位置と経済安全保障の政策動向を意識することが重要と指摘。国際経済活動における共通価値として温室効果ガス削減や人権問題などへの関心が高まっていることに触れ、「新たなビジネスチャンスとなり得る」との見方を示した。
ビジネスのデジタル化に関しては、「デジタル技術に適応したビジネスモデルや社会インフラの構築が不可欠」とし、企業の拠点配置や国際分業の在り方、プライバシー保護やセキュリティーなどの信頼確保と自由なデータ流通が両立する国際ルールの策定が急務と提言している。
また、具体的な課題として「自国優先・保護主義的な貿易制限措置の常態化」「外国政府・企業の市場歪曲(わいきょく)的措置などによる公平な競争条件の毀損(きそん)」「経済活動のデジタル化に対応した国際的なルールの未整備」などを指摘。今後の方向性として、デジタル技術の活用による強靭なサプライチェーンの構築や、アジアの持続可能な成長を実現するための新たな市場機会の獲得などの重要性を強調したほか、自由貿易体制を担う新たな国際ルールや規範づくりに取り組み、日本の強みを生かすバリューチェーンを官民でつくり込むことなどを提言している。
詳細は、https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2021/index.htmlを参照。
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