日本商工会議所の三村明夫会頭は16日、定例の記者会見に臨み、地域別最低賃金額改定の目安が全国加重平均額で28円の大幅な引き上げとなったことについて、「極めて残念であり、到底納得できない」とする3団体の考えを改めて示した。「最低賃金の水準に近い労働者を雇用している飲食業や宿泊業などのコロナ禍で厳しい状況に置かれている事業者により大きな影響を与える」と強い懸念を表明。最低賃金の決定プロセスについては、「決定の在り方自体に疑問を持たざるを得ない」と批判した。
厚生労働省は16日、中央最低賃金審議会(厚生労働大臣の諮問機関)を開催し、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について、全国一律に28円引き上げる答申を決め、公表した。今年度の目安が示した引き上げ額全国加重平均28円(引き上げ率3・1%)は制度開始以降の最高額となった。
答申のベースとなった公益委員見解では、「『経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針)』と『成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ』に配意した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした」と記載。実質的に政府方針を追認する見解であったことを認めた。また、今年度の経済情勢も2016~19年度と大きく変わらないとの判断を示すなど、「結論ありき」を印象付ける内容だ。
16日の会見で三村会頭は、「審議会でどんなに議論しても、最初から政府の方針を十分に配慮した結論になるということが堂々と書かれている。最低賃金の決定の在り方自体に疑問を持たざるを得ない」と今回の審議のプロセスを厳しく批判。「最低賃金の水準に近い労働者を雇用している飲食業や宿泊業などの長引くコロナ禍で厳しい状況に置かれている事業者により大きな影響を与える」と懸念を表明した。
また、政府方針が最低賃金に影響を与えていることついて「最低賃金法に政府方針を尊重しろとは書いていない。法律に基づいた議論をお願いしたい」と強調。「全体の賃金体系を左右する要因となれば法の趣旨を逸脱している。マクロ経済全体に政府の意向の影響が及ぶことは好ましい状況ではない」と苦言を呈した。
日商では、今後、地方の審議会で中小企業や地域経済の窮状、雇用への影響をしっかりと考慮した検討が行われるよう呼び掛けるとともに、政府に対しては、コロナ禍の影響に苦しむ中小企業・小規模事業者への支援や雇用対策に万全を期すことを強く求めていくことにしている。
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