ポイント還元制度開始から約1カ月が経過したところです。10月末までに約92万店が登録申請を行い、うち約64万店(11月1日時点)の加盟店登録手続きが完了しました。制度開始直前の時期には、申請件数が1日当たり1万件ありましたが、最近は少し落ち着いて5千件近くを受け付けています。また、都道府県別の件数も公表されましたので、自分の地域での登録状況などを確認することができます。
課題解決の手段の一つに
今回は、地域活性化を目的にキャッシュレス決済を活用する取り組みを紹介します。
キャッシュレス決済への消費者の認知や関心が徐々に高まるなか、地域単位で推進する動きが活発になってきました。こうした取り組みに共通するのは、「地域活性化」「人手不足への対応」「インバウンド消費の取り込み」など、地域特有の課題解決手段の一つとしてキャッシュレス決済が活用されています。
キャッシュレス決済の導入は個別店舗に向けた施策だと考えがちですが、実は広く「面」で活用することで、地域全体への経済効果や、結果的に個別店舗の活性化にもつながっています。
ある観光地では、ハイシーズンに多くの観光客が訪れているのにもかかわらず、地元商店での消費(売り上げ増)になかなかつながらないという悩みを抱えていました。そこで、キャッシュレス決済を利用した観光客に、地元商店で使えるクーポン券を発行することにしました。すると、「せっかくなので」と言って、そのクーポン券を持って地元商店で買い物をする観光客の誘導に成功し、域内での回遊性を実現できました。
多くの観光客は、事前に観光施設などを調べてから訪れますが、商業地の情報を調べて訪問するというケースはあまり聞かれません。そこで、クーポン券を発行することで、「せっかくだから使ってみよう」というインセンティブが働いて、地域の活性化にもつなげることができました。
イベント来場者の多くは、「財布」や「現金」の取り扱いに煩わしさを感じているようです。他方で、イベントに出店する店舗なども、キャッシュレス決済事業者ごとに導入手続きを行う必要があるなど、煩雑さや使いにくさを感じているようです。
そこで、個別店舗の事務手続きの煩雑さを解消しようと、地域の商工団体や観光協会がキャッシュレス決済事業者との窓口役を務める動きが出てきました。店舗側にとっては、釣り銭の準備や来場者との金銭授受が不要となり、回転率も向上し、より多くの商品などを販売することが可能となります。
また、消費者側も今日の財布に入っている現金残高に制約されることなく購買できるようになり、より高い客単価も期待できるようになります。窓口役を務める商工団体なども、キャッシュレス決済によって集まった購買データを分析することで、イベントの傾向や人の流れなどを把握でき、次回以降のイベント運営に役立てることができるようになります。
自治体が中核の推進母体設置を
さらに、イベント単位から地域単位でキャッシュレス決済を推進しようという、恒常的な取り組みが拡大しています。
自治体、商工団体、観光団体、地域金融機関などが地域一丸となってキャッシュレス決済推進に取り組むための組織を立ち上げる動きが出てきました。課題解決の一助となるような導入、地理的特性や文化・歴史などへの造詣の深い地域ならではの手触り感ある取り組みなど、キャッシュレス決済の目的がますます多様化しています。
地域によって普及しやすいサービスの提供方法は多様です。今後、自治体を中核とした推進母体の設置により、キャッシュレス決済のさらなる導入促進と定着を期待しています。(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)
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