今月は「標的型攻撃(Targeted Attack)」の3回目です。今回は「標的型攻撃」に遭ってしまった場合の影響とそれに対する対応策について説明します。
1月号で説明した通り、最近の標的型攻撃のほとんどは、「金銭の獲得」と「諜報活動」が目的と考えられています。つまり、盗んだ情報がお金に換えられたり、産業スパイ活動で悪用されたりすることで影響が発生するのです。
では、実際にどのような影響が発生するのでしょうか。標的型攻撃に遭った場合の影響としては、問い合わせ窓口の設置と運用、原因と影響の調査、ネットワークやシステムの停止による業務効率の低下と代替サービスなどの手配、システムやPCの復旧などに多くの手間や多額の費用が発生します。
特に、原因と影響の調査は必ず実施しなければならず、この中で最も手間も費用もかかります。その理由は二つあり、一つは、所管省庁に対する報告義務や関係者に対する説明責任を果たすためです。もう一つは、再発防止のためです。原因が究明できなければ、それを排除することができないからです。
また、標的型攻撃が発生した直後に、便乗詐欺による二次被害もよく発生します。たとえば、「今回の標的型攻撃で、あなたの情報が漏えいしました。その対策を○○万円でします。すぐにしなければ大きな被害になります」などと不安をあおって、お金を詐取しようとしてきます。
さらに、一般企業であれば、ブランドイメージの低下、それに伴う株価下落などが挙げられます。「被害」というと、漏えいした情報の件数×1000円ほどのお詫びの商品券と謝罪文、そしてその郵送費などと考えられがちですが、実際の影響としては、それ以外の方が圧倒的に大きいのです。
対応策として重要なことは、迅速に組織的に行動することです。サイバー犯罪とリアルな犯罪の違いは、盗まれるモノ(物品、データ)と、そのモノの移動時間です。物品の移動は物理的に時間がかかりますが、データはインターネットを介して一瞬にして移動します。だからこそ、サイバー犯罪には迅速な対応が必要となるのです。
迅速な対応をするためには、攻撃に遭うことを想定して、対応方針を決めておくことが必要です。「攻撃に遭ったら、そのときに考える」と思われている人も多いかもしれません。しかし、それでは迅速な対応はできませんし、あらかじめ対応方針を決め、手順化したり、教育訓練などをしたりしていなければ、いざというときに行動に移せるはずがありません。
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