乳がん術後女性の心と体を親身にケア
株式会社コフレ 代表取締役 神田 文子(かんだ・あやこ)
自身の罹患経験を生かして
コフレは乳がん患者専用の下着の試着販売と美容施術を行う「女性の心と体のトータルケアサロン」です。創業者である私自身、かつて乳がんに罹患し、乳房の全摘手術を受けました。そのときの喪失感や劣等感、術後の家庭や職場への復帰の難しさを痛感したことから、罹患女性が女性としての尊厳を守りながらスムーズに家庭や職場に復帰できるようサポートしたいと考えるようになりました。
現在、日本人女性の乳がん罹患数は増加しており(国立がん研究センター統計など)、患者の多くは術後の生活に悩みや不安を抱えています。乳がんは、乳房の温存、全摘などの手術方法や、切除部位と範囲、手術からの経過期間、年齢、おしゃれに対する意識などにより術後の生活に個人差があるため、罹患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を高めるには個々に応じた適切な情報提供やアドバイスが必要です。
女性の象徴である乳房を失うことは、年齢に関係なくかなりの喪失感・劣等感を伴います。誰にも相談できないとふさぎ込んだ私が唯一心を許して話せたのは、乳がんの罹患者、経験者でつくる会に参加したときでした。参加した方たちが情報を惜しみなく提供し、励まし、勇気づけてくれたことは大変心強く、おかげで術後の不安定な時期を乗り切れたように思います。この経験から、「罹患女性の気持ちに寄り添い、女性として笑顔や輝きを取り戻せるようできる限りサポートすること」を経営理念に掲げて起業しました。
人材採用、店舗展開も視野に
まず始めたのは、術後用下着の試着販売です。病院は、術後の医療下着のことまで対処してくれるわけではないため、退院後の衣生活は女性にとって大きな悩み。自分で情報を集め、お店を回るうち、心身共に疲弊してしまいます。そこで、悩みを解決する下着を提供しようと、あらゆる補正下着を自ら試し、看護師や利用者の意見を基に開発・改良されたリプロ社の「リプロバランスパッド」を採用しました。乳房切除後の術痕保護や外見補正に優れた製品です。
また、美容業界で仕事をしていた経験を生かし、術後の体や抗がん剤治療で傷んだ髪、肌をケアする美容施術も始めました。お客さまから「自信を取り戻せた」などの声も徐々にいただき、このサービスを今後さらに広く発信していきたいと考えています。
現在は、神奈川県川崎市の自宅ビルで営業していますが、千葉県、埼玉県、東京都などのお客さまも増加しているため、将来的には関東主要駅近くへの出店を考えています。新規従業員の雇用も視野に入れており、例えば治療のための入院・通院でフルタイム勤務が難しい方を在宅勤務や短期で雇用することを考えています。事業の周知を図り、地方自治体からのがん患者への助成費拡大も目指します。コフレが、乳がんに罹患し、人知れず困難で不安な毎日を送る女性にとっての助け、支えになれればと思っております。
会社データ
社名:株式会社コフレ
所在地:神奈川県川崎市幸区下平間195番地 コフレ新川崎101
電話:044-201-7727
創業:2016年
事業概要:美容業(乳がん術後女性の心と体のトータル美容ケアサロン運営)
HP:https://www.navida.ne.jp/snavi/100323_1.html
※月刊石垣2019年6月号に掲載された記事です。
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