政府は7月30日、第42回未来投資会議を首相官邸で開催した。会議は、独立行政法人地域医療機能推進機構の尾身茂理事長、国立感染症研究所の脇田隆字所長らメンバーを拡大しての初会合となった。議事は、新型コロナウイルス感染症の時代、さらにはその先の新たな社会像の検討に向けた議論テーマについて。日本商工会議所の三村明夫会頭は欠席となったが、代わりに意見メモを提出した。
三村会頭はポスト・コロナ時代の「社会経済構想」の検討について意見した。議論の対象については、将来、コロナを一定の制御下に置いた後の、すなわち「ポスト・コロナ」時代における、わが国のあるべき姿や国家運営の方向性であるとの考えを示した。いったんコロナはインフルエンザのように、常在しながらも一定の制御下に置くことができ、しかしながらコロナ禍に伴い国際社会に大きな変化が生じたという意味でのポスト・コロナの時代を前提として、その中でわが国がいかに存在感を示し、そのためにいかなる国家運営を指向すべきかという大局観であると指摘した。
ポスト・コロナにおけるわが国の運営の基軸については、最も重要なポイントとして2点挙げた。
一つ目は、社会経済において「リダンダンシー」、すなわち、「戦略的ゆとり」を確保するという政策の設計思想。地政学、自然災害、パンデミックなどさまざまな観点で、ポスト・コロナにおける社会経済の最も考慮すべき特徴は、かつてない「不確実性」の大きさと考える。この環境下で生き抜いていくには、不確実性を吸収するためのバッファを戦略的に適切に組み込むことが肝要と指摘した。
具体的な政策分野への適用として特に重要なものとして、①短期的効率性から長期的耐久性へのシフト、集積と分散のリバランス。特にコロナ禍によって東京一極集中のリスクやコストが予想以上に大きいことが判明したことを踏まえ、地方創生を改めて真剣に考える好機とすべき、②経済合理性の追求に対し安全保障の観点からのリバランス、すなわち経済安全保障、食糧安全保障、医療安全保障上の対策、③特に今回のコロナ禍で、社会経済にとって文字通り致命的に貴重なインフラであることが明確となった医療に関する安全保障の観点から、医療提供体制の安定化、④年々、激甚化する自然災害に対する強靭(きょうじん)性の確保を提示した。
二つ目は、この戦略的ゆとりを確保するための財源を、いかにひねり出すかということ。政策シフトにはいずれもコストがかかることから、デジタル化を主な手段とする抜本的なわが国の生産性向上による付加価値の増大を、その最大の財源とすることとの認識を示した。
さらに、ウイズ・コロナ対策の要諦について、ポスト・コロナ時代に日本が世界の中でいかなるポジションを得られるかを左右する大きな要因として、いかにダメージを少なく、コロナ禍から脱却できるかということを強調した。その観点から、ウイズ・コロナ対策で最も重要なこととして、コロナのさらなる感染拡大があっても、経済の自粛や非常事態宣言に直結させないための体制の確保を説いた。その要諦は、有効性が高い検査体制の拡充と医療提供体制の安定化にあるとし、日商が7月28日に取りまとめた要望「活動再開の基礎的インフラである検査体制の拡充と医療提供体制の安定化に向けて」を改めて提示した。
最新号を紙面で読める!