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テーマ別企業事例 商工会議所創立140年記念 時代を超えて学びたい渋沢栄一の経営哲学

世界、他分野に挑み続け、地域貢献、人材育成にも尽力

船舶推進機器の設計から製造まで手掛け、修理やメンテナンスにも専門の技術者を派遣。世界各国に広がる顧客に対しても迅速なサポート体制を整えている

船舶用プロペラのリーディングカンパニー、ナカシマプロペラ代表取締役社長の中島基善さんは、第14回(平成27年度)渋沢栄一賞に輝いた。世界3割、国内7割のシェアを誇る実績と、プロペラの曲面加工技術を生かした人工関節の開発を進めるなど、他分野にも積極的にビジネス展開を図る。地域貢献、人材育成にも注力し、岡山県初の受賞となった。

お客さま本位の一品受注生産を貫く

「最終選考に残ったという知らせを受けて、初めてエントリーされていることを知りました」

渋沢栄一賞は他薦のため本人は突然知ることが多いが、ナカシマプロペラの代表取締役社長、中島基善さんもその一人だ。取引のある商工組合中央金庫岡山支店からの推薦で、第14回渋沢栄一賞に輝いた。うれしさよりも驚きが先だったと振り返るが、その業績には渋沢栄一翁に通じる経営哲学を感じさせるものがある。

同社は、日本造船業の一大中心地、瀬戸内地方で大正15年に創業。2年後の漁船用プロペラ第一号の納品日を創立記念日として今も記憶にとどめている。太平洋戦争後に大形プロペラづくりに着手し、世界市場でのシェアを伸ばし続け、今や世界の3割、国内では7割のトップシェアを誇る。

「昭和62年に当時最大手だった神戸製鋼が船舶プロペラ事業から撤退したことで、国内2位だったわが社が顧客の大半を引き継いだことで得られたシェアです」

造船不況で一躍トップに躍り出たと中島さんは苦笑するが、棚からぼた餅式に転がり込んできた座では決してない。100の船があれば100通りのプロペラがあるというスタンスで、同社は、創業から一貫して一品受注生産を貫いてきた。一隻一隻に技術と知識を惜しみなく注ぎ、培われていったのは直径20㎝のレジャーボートのプロペラから12mの大形プロペラまで、フレキシブルに対応できるナカシマクオリティーだ。世界広しといえども、ここまで柔軟に対応できる船舶推進機器メーカーは例がない。小形、大形プロペラと、異なる景気の荒波を巧みに乗り越え、現在に至るのである。

最新機器と職人技で他分野にも果敢に挑戦

製品の高性能化と生産性向上を実現しようとコンピューターの導入、アップグレードへの投資も積極的に行い、同時に職人技にも磨きをかけてきた。この最先端テクノロジーと高度な手仕事の融合が、他社の追随を許さない同社の強みになっている。

そして、この技術が思わぬ分野でも生かされている。造船業とはかけ離れた医療分野だ。

「工場見学にいらした一人の医師から、人工関節にプロペラの曲面加工や研磨の技術が生かせないかと打診されたことが始まりです」

国内の医療分野で使われる人工関節は、そのほとんどがアメリカ製だという。プロペラで国内トップシェアになった昭和62年に、日本人の関節に最適なサイズで、椅子ではなく畳に座る生活習慣に合う人工膝関節の開発に向け、人工関節事業にも参入するのである。

「千葉大学との産学連携で、当時の厚生省から医療用具製造許可を受けてチタン合金の人工膝関節をつくりました」と中島さん。 医療事業室、メディカル事業部として事業を進め、平成20年には「ナカシマメディカル」として分社化し、現在は帝人の出資を受けて、「帝人ナカシマメディカル」として展開している。28年には国内初の人工手関節が厚生労働省に承認され、注目を集めた。

「人工関節はまだまだシェア2、3%といったところです。しかし品質、性能には自信があります。少しずつ使ってくれる病院、先生を増やして認知してもらうことが課題です」と中島さん。他分野にも果敢に挑戦する姿勢にも、プロペラを「もの」としてではなく、「最適」という価値の提供と捉え、「最適創造カンパニー」という経営方針を掲げる、同社の神髄が垣間見える。

利益追求を超えた社会貢献と人材育成

プロペラや人工関節への事業展開だけではなく、地域経済への貢献、次世代に向けた人材育成の取り組みも目覚ましい。

世界や他分野へ目を向けるだけではなく、地元岡山も常に視野に入れていることも、渋沢栄一の哲学に通じるものがある。25年に公益財団法人中島記念財団を設立し、岡山県内に在学している留学生や、バレーボールチーム「岡山シーガルズ」をはじめとするスポーツチームへの支援も続けている。これも突然始めたことではなく、昭和32年に中島さんの父であり、二代目の保さんが、アメリカのサンノゼ市と岡山市の姉妹都市化に奔走したことにさかのぼる。その後も交換留学生を受け入れてきた経緯があり、その中には世界で活躍する人物へと成長し、今も交流が続いている人もいるという。

一方、スポーツ面では40年以上前からバスケットボールの実業団チームを持ち、地域スポーツの振興を進めてきた。24年に岡山県が「スポーツ立県おかやま」を宣言したことを受けて、これまで不定期に行っていた留学生やスポーツチームへの支援の計画を立てて実行するべく、財団を設立したという。

「グループ企業10社があればこその展開です。本業ではベトナムやフィリピンにも工場を設け、ASEANを中心に海外進出を図っていますが、安い労働賃金目当てなわけではなく、伸び代のあるマーケットがあるからです。現地法人もゆくゆくは現地で経営者になり得る人材を育成したいと考えています。また昨年からフィリピンに、日本語を教える教師を育てる学校をつくりました。世界と日本の人的交流、医療、福祉面での人材不足をグローバルな視点で解決できたらと考えています」(中島さん)

一企業の利益を追求するだけでないこうした取り組みも含めて、同社では近江商人の言葉になぞらえてこう表す。「売り手よし、買い手よし、世界よし」。同社は多角的に今を、未来を見据え、独自の航路を突き進む。

会社データ

社名:ナカシマプロペラ株式会社

所在地:岡山県岡山市東区上道北方688-1

電話:086-279-5111

HP:https://www.nakashima.co.jp/index.html

代表者:中島基善 代表取締役社長

従業員:400人

※月刊石垣2018年4月号に掲載された記事です。

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