4都府県に対する緊急事態宣言の再発令決定について
変異株の流行に伴う感染再拡大により、2度目の緊急事態宣言解除から約1カ月で4都府県における再宣言が決定された。特に、関西圏における感染急拡大に伴う医療逼迫(ひっぱく)は深刻であり、やむを得ない措置である。
東京都は、感染急拡大への予防措置と認識しているが、国民や事業者の予見可能性を確保するためにも、宣言発令と解除の判断基準を分かりやすく示していただきたい。
緊急事態宣言に伴う休業要請などの強度の高い措置は、長引くコロナ禍で困窮する地域経済や企業経営にさらに甚大な影響を与えることになるので、これまでの知見や政策検証に基づき、効果的な対策を短期集中的に講じ、早期解除を実現されたい。
また、制約を課す事業者に対しては、一層の迅速かつきめ細かな支援の拡充と実行が不可欠である。商工会議所として、中小企業などの事業継続と雇用維持、ポストコロナに向けた挑戦を引き続き強力に後押ししていく。
こうした国民や事業者の感染拡大防止への取り組みとあわせ、感染封じ込めに向けた検査の拡充とともに、非常時における機動的な病床の確保など、国や自治体の強力なリーダーシップの下、専門病棟の整備も含めて、地域医療連携による医療提供体制の抜本的な強化を進めていただきたい。
感染拡大防止と社会経済活動をぎりぎりのところで両立していく希望の光であるワクチンについては、安定的な供給を確保し、接種スピードを加速させるため、接種目標やスケジュールを見える化し、PDCAサイクルを回して計画的に推進されたい。円滑な接種においてボトルネックとなっているものがあれば、規制緩和による拡充を至急図るとともに、民間活力を是非とも活用いただきたい。
最後に、東京2020大会は、感染拡大防止と社会経済活動を両立する象徴的なイベントと位置付け、意欲と粘り強さを持ち挑み続けることが大事である。安全・安心な大会を実現することができれば、国民全体に漂う閉塞感を打ち破り、社会に明るさと希望を与え、日本の強さを世界に示すことができる。 (4月23日)
2030年度温室効果ガス排出削減目標改定について
わが国の2030年度における温室効果ガス排出削減について、今般、菅総理が「2013年度比46%削減」という大変野心的な目標を示された。2050年カーボンニュートラル実現に取り組む強い決意を国内外に示すものとして受け止めたい。
これまでの「26%削減」を大きく上回る新たな目標を、既存技術をベースとし、わずか9年という短期間で達成することは容易ではない。まずもって、現存の脱・低炭素電源を最大限活用することが不可欠であり、特に原子力発電については、改めてわが国のエネルギー政策における位置付けを明確にするとともに、安全対策を徹底した上で、早期再稼働、新増設およびリプレースを進めていくことが急務である。
加えて、エネルギーの供給側、需要側双方の幅広い分野において、排出削減に資する技術の実装を加速していくことが求められる。政府には、民間による取り組みを力強く促すインセンティブとなるよう、あらゆる施策を総動員するとともに、野心的目標の実現に相応しく、諸外国に見劣りしない大規模かつ積極的な財政支援を期待する。併せて、温暖化対策の推進に伴うコストの上昇を明確に示し、国民に理解を求めるとともに、公平な負担の在り方についても早急な検討が必要である。
日本商工会議所としても、中小企業がこれまで以上に温暖化対策を自社の経営に取り入れていけるよう支援を強化していく考えである。
また、温暖化対策を実効的なものにするためには、中国および米国をはじめとする主要排出国による地球規模での努力と協力が不可欠である。この実現に向けた政府の努力に期待したい。 (4月22日)