独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、「2021年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)」結果を公表した。海外進出企業の2021年の業績は全世界的に上向くも、回復の勢いは力強さを欠く状況。黒字企業の割合は6割を超えるも、過去10年間で2番目に低い結果となっている。
景気回復・需要増に沸く一部の業界と、経済活動制限が直撃する旅行などのサービス業との間の業種間格差が一段と拡大。今後1~2年で、事業の「拡大」を見込む日系企業の割合は前年から増加しているものの、長引く新型コロナの影響による先行きの不透明感で、新型コロナ発生前の19年の水準には戻っていない。
半導体不足や鉄鋼など原材料価格の上昇、コンテナ不足による海外輸送コストの増加など、経済活動再開に伴うサプライチェーンの混乱が、広範な業種に影響。生産コストの増加を価格に転嫁せざるを得ない状況の下、「販売価格の見直し」に取り組む企業の割合は前年から約8割増えている。
温室効果ガスの排出削減については、すでに取り組んでいる企業の割合が3割を超えるも、大企業と中小企業との取り組みに大きな格差。進出先国の法令や炭素税などの税制が、企業の取り組みを促す強制力となっている。
日系企業の間では、マーケティング機能の強化や販売先拡大を目的に、ECやクラウド技術の活用が進展。他方、過半数の企業がデジタル技術を扱う人材不足の課題に直面している結果となっている。
調査は、2021年8~9月にかけて、海外82カ国・地域の日系企業1万8932社を対象にアンケートを実施。回答は7575社(有効回答率40%)。
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