政府は5月19日、首相官邸で「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会を開催し、萩生田光一経済産業大臣が「クリーンエネルギー戦略中間整理」を示した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、中間整理について「全体的に同意する」と述べるとともに、同12日に日商が公表した「2050年カーボンニュートラル実現に向けたクリーンエネルギー戦略に対する意見」を説明。「エネルギーの安全保障と安定供給」「技術開発の加速」「地域と中小企業の挑戦支援」など意見書の内容について実現を強く求めた。
三村会頭は、「カーボンニュートラルへの挑戦を新しい国際競争に向けたスタートと捉え、長期停滞からの脱出と新たな成長につなげることができるか、わが国にとって大きな試練と認識している」との見方を表明。エネルギーの安全保障と安定供給については、原油・LNGの安定供給の確保、原子力発電の最大活用・早期再稼働が重要と強調した。
また、カーボンニュートラル関連技術開発の加速については、期待される技術分野を示し、資金面での大胆な支援を要請。「わが国が目指すカーボンニュートラル時代の経済社会の全体像と道筋を示し、ビジネスの予見可能性を高め、民間の積極的な投資、技術開発、事業創造を促してほしい」と述べた。
萩生田経産相が公表した中間整理では、成長が期待される産業ごとの具体的な道筋、需要サイドのエネルギー転換、クリーンエネルギー中心の経済・社会、産業構造の転換、地域・くらしの脱炭素化に向けた政策対応などについて整理。また、ロシアによるウクライナ侵略や電力需給ひっ迫も踏まえ、今後進めるエネルギー安全保障の確保と、それを前提とした脱炭素化に向けた対応なども示し、年末までに最終的な戦略を取りまとめる。
会議に出席した岸田文雄首相は、「炭素中立型社会へ転換するため、少なくとも今後10年間に官民協調で150兆円超の脱炭素分野での新たな関連投資を実現する」と強調。政府として、規制・市場設計・政府支援・金融枠組み・インフラ整備などを包括的に示した「GX(グリーントランスフォーメーション)投資のための10年ロードマップ」を取りまとめる考えを表明した。また、今夏に官邸に新たにGX実行会議を設置する意向も併せて示している。
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