今年度のYEGフラッシュは、商工会議所(親会)とYEGの良好な関係をご紹介します。タイトルの「藍と青」は、渋沢栄一翁の生家の家業が藍農家であったことから、藍を親、青をYEGとし、一般的にいわれる師弟のことではなく、「君子曰く、学は以て已(や)むべからず(学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されて優れたものになる)」という本来の意味に立って取材します。
江戸時代から続く運河のまち、半田市。醸造文化と繊維産業で栄え、現在も商業、製造業、農業を中心に発展する。地域の経済活動を支える半田商工会議所は、2023年に創立130周年を迎えた。歴史あるまちで育む、半田商工会議所と半田YEGの関係性を探った。
現会頭はYEG会長の経歴あり商いのまちに変わらず寄り添う
半田市は江戸時代から続く商業のまちだ。港湾都市の特性を生かした工場立地を推進し、時代の流れに合わせてイノベーションを繰り返してきた企業が多い商都である。その商いのまちに設立された半田商工会議所(以下、親会)は、昨年、創立130年を迎えた。愛知県で4番目、全国では38番目に設立された歴史のある商工会議所だ。小柳厚専務理事によると、最も古いもので1920年の会報誌が現存しているそうだ。過去も今も、激変する世界市場で生き残るために変革を続ける地域の事業者たちに、変わらず寄り添い支援を行う親会の姿が記録されているという。
半田商工会議所青年部(以下、YEG)の設立には紆余(うよ)曲折があった。60年前に前身となる「若手経営者が考える駅前再開発の会」が発足し、次いで30年前、すなわち親会100周年に合わせ、100人の会員を引き連れYEGとして親会の組織に入ったという経緯がある。親会入りを主導した東浦右智会長(当時)の意思を継いだ翌年度の会長が、現在、親会の会頭である松石奉之氏である。 「36歳だった当時、全国会長研修会に参加しました。中には55歳という会長もいて、親子のような年齢差があったのを覚えています」。会長時代には、まちづくりや地域活性化につながるイベントを行った。「阪神淡路大震災の年でもあったので、YEGとしてできるだけのことをやりました」と松石会頭は会長時代を振り返る。
一丸となって臨んだ記念事業 心合わせを社業繁盛につなぐ
そんな半田商工会議所は2023年11月24日、130周年記念事業として記念式典と祝賀会を開催した。その際、大いに活躍したのがYEGと女性会のメンバーだったという。受け付けや駐車場の整理、式典の進行などをYEGが務め、受け付け後のリボン渡し、クローク、祝賀会のサーブなどは女性会が担ったそうだ。 「親会の中で130周年特別委員会という組織をつくり、そこを中心にYEGと女性会にぜひ一緒に手伝ってほしい、職員も一丸となってやってほしい。行事の実施だけで終わってしまうのではなく、皆が130周年を共にしたという気持ちを持っていただきたいとお願いしました。こうした総出の設(しつら)えはかなり珍しいケースで、来場した皆さまに『これはすごいね』と評価していただけました。半田を知ってもらうとてもいい機会になりました」と松石会頭は目を細める。
大きな事業を行おうとすればそれだけ準備が増える。困ったときに役に立ったのは先輩の助言だったという。「親会にはYEGのOBも多く、顔が分かるので話をしやすい。先輩の経験値で助言をくれるし、勉強させていただいている。親会の周年事業で培った経験を、YEGの周年事業やさまざまな事業の場面で伝えて還元していきたい」。そう話す久松宏行YEG専務理事の顔には、一大事業に貢献した自信がのぞく。
親会の大きな事業を経験したYEGは、今後どう活動していくのか。森下達夫会長は、「60周年という節目の年。今年のスローガンの『社業繁盛』は、YEGの綱領・指針だけでなく、親会の方針でもあります。YEG活動を通じてしっかり社業を伸ばし発展させていくとともに、原点に返る気持ちを忘れないようにしていきたい。人のつながりや地域の輪を広げることは、人と人とが心合わせをするということ。対面だからこそできることを大切にしてYEG活動を進めていきたい。経済団体であるというYEGの存在についてしっかりメンバーとともに考えて、周年という節目だからこそ、どんな事業も社業につなげてもらいたいという思いで改めてスタートしていく」と意気込む。YEG会長経験者が会頭であるという情意投合の機会を生かし、親会から「商いの心」をしっかり受け継ぎながら活動していく姿勢を感じた。
未来に引き継ぐべき 変わらない良さ
こうした共同事業を行うことになった理由について、松石会頭は「YEGの定年を延長したので、卒業してから親会の役員になるまでの空白が埋まり、顔見知りの先輩、後輩関係を生かせるようになりました。また、各委員会には必ずYEGから数人出向してもらっています。自分自身もそうだが、だんだん年を取ると経験値と過去の実績だけで物を言うようになる傾向がある。若い人たちの意見を取り入れた委員会活動をしないと、変化に対応できないと気が付きました」と話す。この気付きが、YEGと親会との強いつながりや、より良い関係性の構築を促しているようだ。
逆に変わらないところはあるのか。「森下会長が言うように、YEGは自社業の発展を大事にする活動がとても重要。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら自社PRすること。それは半田地域の歴史として変わっていない良いところです。もっと商売っ気を出せと言い続けています」。その活動が中小企業を元気にさせ、地域を活性化させ、消費が広がることにつながる。YEGメンバーの一人一人が地域を支える青年経済人たることが重要だと松石会頭は力強く答えた。
またYEGが親会から多大な協力を得て取り組んだ「半田働楽(はたらく)こどもマルシェ」事業は、地域の子どもたちを招待した職業体験事業である。会場である商工会議所敷地内をまちと見立て、花屋さんや鍛冶屋さん、中には公務員など、子どもたちは思い思いの仕事に就く。名刺を作成して配ったり、実際のお金を使い給料を出したりするなど、かなりリアルな体験ができたと参加者から好評を得た。「子どもって、地域にこういう事業があることを知らない。これを通じて子どもたちが将来のことを考えるきっかけとしてほしい」と森下会長は話す。
歴史ある商いのまちで育む「商いの心」は、こうして世代を超え引き継がれていく。
【半田商工会議所】
会 頭 : 松石 奉之
設 立 : 2412人
会員数 : 1893年
住 所: 愛知県半田市銀座本町1-1-1
スローガン: 「レジリエンス~共に生き、共に栄える~」
HP:https://www.handa-cci.or.jp/
【半田YEG 】
会 長: 森下 達夫
会員数: 148人
創 立: 1993年
スローガン: 「社業繁盛!咲き誇れ!~GROW UP HANDA YEG~」
HP:https://handa-yeg.com/
編集後記
内山 泰伸(さいたまYEG) 「藍と青」をご覧いただき、ありがとうございます。 また、半田商工会議所の皆さま、および半田YEGの皆さま、取材へのご協力ありがとうございました。半田YEGは当委員会藤野道子委員長が所属する単会です。全てにおいてパワフル、エネルギッシュな委員長がどのように誕生したのか、取材を終えて分かりました。この半田のパワーを、ご購読いただいている皆さまにも受け取っていただければと思います。元気玉―!!!
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報☆ブランディング委員会 石垣チーム/写真提供:半田商工会議所青年部
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