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第130回通常会員総会 三村会頭あいさつ

全国から約900人が出席

本日は、日本商工会議所第130回通常会員総会を、岡田内閣官房副長官、菅原経済産業大臣をはじめ各政党のご来賓の皆さま、また、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

まず、8月の九州北部豪雨、そして、この度の台風15号において、被災された地域住民、事業者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。一日も早い生活の再建と事業の再開を祈念しております。

世界経済は、エスカレートする米中貿易摩擦などを背景に、ますます不透明感が強まりつつあります。IMFは、2019年プラス3・2%、2020年プラス3・5%に、世界経済成長見通しを下方修正しましたが、米中貿易摩擦、英国のブレグジット、中東情勢の不安定化などの動向によっては、さらなる下方修正のリスクもあります。

日本は、安全保障面では同盟国である米国と歩調を合わせていく以外には選択肢がありません。しかし、企業のサプライチェーンが国境を越えて張り巡らされている現在、日本が生き残っていくためにはグローバル化は絶対に必要であり、自由貿易体制を何とか堅持し、近隣で急速に成長する中国ともうまく付き合っていかなければなりません。

このように多極化した不確実な世界を当たり前の状態として受け止め、わが国は、経済面でも、安全保障面でも軸をぶらさずに、同じ考え方を持つ国と連携して、粘り強く対応していく必要があると思います。

私は先週、日本経済界の合同訪中団に参加し、北京で李克強首相に、東北地方の農水産物や食品の輸入規制の緩和・撤廃を要請してまいりました。李首相からは、「人類社会の発展においてグローバル化の流れは止められるものではなく、中国はしかるべき責任を持ってグローバルな自由貿易の発展を支持していきたい」また、農水産物や食品の輸入については、「科学的かつ安全の原則に従って徐々に解決し、これを通じて、両国の相互理解と経済貿易の拡大を推進したい」との回答がありました。

事例を点から面へ

こうした中、わが国経済は、個人消費に力強さを欠くものの、民間投資は底堅く、2019年4~6月期GDPは、年率換算で実質プラス1・3%となるなど、比較的堅調を維持しております。

10月には、消費税が引き上げられます。政府には、価格転嫁対策や需要平準化対策に万全を期していただくとともに、わが国で初めて導入される軽減税率制度についても、混乱回避に向け、制度理解を促す広報とあわせ、事業者への十分な支援の継続をお願いします。 世界経済が不確実性を増す中、われわれが主体的に取り組むべきは、日本の成長する力、すなわち、1%程度にとどまる「潜在成長率の底上げ」です。

そのための喫緊の課題が、「人手不足対策」と「生産性向上」です。

人手不足は年々深刻化し、日商調査では、中小企業の66・4%が人手不足で、これ以上業績を伸ばすのが難しい状況です。少子高齢化の中で生産年齢人口が減少するだけでなく、中途採用市場においても、中小企業から大企業にネットで年間約50万人が流出しており、中小企業の人手不足は構造的な問題となっています。

これまでは、女性や高齢者の労働参加もあり、なんとか就業者数は増加してきましたが、それにも限りがあります。新たな外国人就労資格である特定技能人材も、大きな一歩でありますが、最大34・5万人と、6700万人の全就業者のわずか0・5%に過ぎません。また今後は、本年4月以降順次施行されている年休取得義務化、時間外労働の上限規制、同一労働・同一賃金などの働き方改革にも、並行して取り組まなければなりません。

今後、人手不足がますます深刻になることが確実な中で、長い目で見て国を発展させる最重要対策は「生産性の向上」しかありません。 既に各地では、最先端のデジタル技術を活用した、自動運転、インフラ点検・補修、農業、医療などさまざまな分野で生産性向上に向けた社会実装の試みが始まっております。今後は、こうした事例が点から面へと爆発的に広がっていくことを期待したいと思います。

事業承継を通じた成長

国を挙げて生産性の大幅な向上を図るためには、個々の企業、産業全体、政府など、あらゆる主体による取り組みが欠かせません。まず、民間、特に中小企業の取り組むべき課題について、私の考えを述べたいと思います。

一つ目は、「事業承継、創業を通じた成長への挑戦」です。

これまで多くの中小企業が、各地域で必要とされる財やサービスを提供し、雇用を生み出すことで地域経済やコミュニティーを支えてまいりましたが、残念ながら中小企業数は、後継者難などにより、直近2年間で23万社減少しています。

日本にとって必要な、価値ある事業や技術を次代へ承継していくことは、新規創業と並んで極めて重要です。大事業承継時代の到来を、新たなビジネスモデルに挑戦する意欲ある経営者が活躍する時代の幕開けの好機と捉え、商工会議所では、多様な主体と連携し、事業承継支援や創業支援を強化してまいります。われわれの要望もあり抜本的に拡充された法人版事業承継税制は、累計計画申請件数が4千件を超えましたが、さらなる活用を促進したいと思いますし、さらに第三者承継を促進する措置も必要と考えます。

また、事業承継のネックである「経営者保証」の廃止については、安倍総理自ら踏み込んだ対応を表明いただいており、中小企業の事業承継問題が大きく改善していくことを期待しています。

二つ目は、「デジタル技術の実装化による生産性向上」です。

最新のデジタル技術の活用は、中小企業の生産性向上に有効です。商工会議所は、IT補助金などをフル活用し、中小企業へのデジタル技術の実装化を支援していますが、いまだ「発火点」には到達していません。

「発火点」に到らない最大の理由は、事業者目線に立って、IT導入を支援する専門人材が圧倒的に不足していることにあります。近年、中小・小規模事業者が利用しやすいクラウドサービスが登場する中、IT支援人材の育成と専門人材と企業をつなぐマッチング機能を強化していくことが急務です。

中小企業のデジタル化が進まなければ、大企業も自らのサプライチェーン全体の高度化はできません。大企業と中小企業の関係は、単に競争させ、あるいは優越的な地位を利用して、その果実を大企業のみが得ることから、共に悩み・育てる、新たな共存共栄関係へと移行し、国全体の生産性を高めていくことが必要です。

三つ目は、「地方創生への参画」です。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が最終年を迎えています。八王子市や伊勢市などは、商工会議所自身がまちづくりビジョンをとりまとめ、行政に提案して具現化しています。成果の上がっている地域戦略の特徴は、われわれ民間の声を広く聞き、拾い上げていることです。各自治体で第二期戦略に向けた議論が始まりますので、各地商工会議所には、ぜひとも現戦略の検証・評価および次期戦略策定に主体的に関与してほしいと思います。

地域の経済循環を高めるには、域外需要をいかに取り込むかが鍵となります。

インバウンドが年々拡大する中、モノからコトへの消費の質的変化を捉え、広域での観光振興や地域資源を活用した農商工連携が成果を上げております。京都・大津の両商工会議所が連携した琵琶湖疏水通船事業や、魚の陸上養殖で地域ブランド化を進める静岡商工会議所をはじめ、各地域で創意工夫を凝らした取り組みが進んでいます。 日本商工会議所では、こうした各地の取り組みを後押しするとともに、東京などの大都市と地方の連携を推進し、真の地方創生の実現に向けて活動してまいります。政府には、観光インフラや受け入れ態勢、規制緩和など、持続可能な地域づくりの基盤を整備してほしいと思います。

構造改革の推進を

次に、民間の挑戦を支える政府の役割について、私の考えを述べたいと思います。

第一に、規制・制度改革をはじめ構造改革を徹底的に推進し、国全体の生産性向上に資する環境を整備していただく必要があります。 例えば最低賃金については、4年連続で3%台のアップとなり、事業者にとっては厳しい結果となりました。わが国の労働生産性は、主要先進国(G7)で最下位、OECD諸国で20位と、国全体の生産性が低いことから、平均賃金、最低賃金も低くなっているという構造的な問題を抱えています。

政府には、なぜわが国全体の生産性が低いのかを分析いただいた上で、企業自らが生産性を向上させ、その上で自発的に賃上げしていける環境整備など、思い切った施策を講じてほしいと思います。

また、取引価格の適正化も極めて重要です。日商調査では、中小企業の約8割がコストアップを十分に転嫁できていません。これを適正化することはもちろんのことですが、下請法でカバーされる取引は全体の10%に過ぎず、より広く大企業と中小企業の取引条件を適正化していく必要があります。

今年の成長戦略で示されたように、今後は個別の産業や企業規模ごとの分析を行い、取引関係の課題を明らかにし、取引価格の適正化に向け、一歩踏み込んだ効果的な対策を講じていただきたいと思います。

第二は、「将来不安の払拭(ふっしょく)」です。

アベノミクスにより、足元の安心は確保されたと思いますが、今後は政策の軸足を、将来の安心へとシフトさせることが重要です。

個人消費に力強さが欠ける要因として、将来不安、とりわけ、社会保障制度の持続性への不信感は根強いものがあります。応能負担の徹底、給付と負担における世代間バランスの見直しの視点に立った、全世代型社会保障制度の構築に向け、早急かつ徹底的に国民に分かりやすい議論を進めてほしいと思います。

東日本大震災から8年半が経過しました。商工会議所は、本格復興・福島再生に向けた事業者の自立・自走への挑戦を、引き続き全力で後押しするとともに、近年常態化している大規模自然災害に対しても、中小企業のBCP策定を支援し、地域の防災力・減災力の向上に貢献してまいります。政府には、風評被害の払拭をはじめ、復興・創生期間終了後も一元的対応を可能とする復興庁の後継組織を通じ、強力な支援を継続してほしいと思います。

以上、所信の一端を申し述べました。

令和の時代が始まりましたが、渋沢栄一翁が新一万円札の顔となることが決まり、2021年のNHK大河ドラマにおいても、その生涯が描かれることになりました。大変喜ばしい限りです。新しい時代において、渋沢翁の精神を継ぐ商工会議所の果たすべき役割は大きいと感じております。 日本商工会議所は、この10月末で第30期が終了します。今期までお務めいただいた、全国の商工会議所の会頭をはじめ役員、議員の皆さまにおかれては、これまでの活動に深く敬意を表するとともに、日本商工会議所へのご協力に、心からお礼申し上げます。

これから先、日本においてはビッグイベントが続きます。明日からは、いよいよラグビーワールドカップが開幕します。東京オリンピック・パラリンピックの開催まではあと1年を切り、各地での準備もいよいよ本格化してまいります。2025年には関西万博も控えております。これらの国家的イベントを、開催地のみならず、日本全体の成長につなげてまいりましょう。

本年11月からスタートする第31期においても、日本商工会議所は、全国の商工会議所、連合会、青年部、女性会の皆さまと共に、ネットワークをいかんなく発揮し、山積する諸課題に積極果敢に挑戦し、乗り越えていきたいと思います。 皆さまの多大なるご支援、ご協力をお願いして、私のあいさつとします。 (9月19日)