日本各地のまちには、それぞれが育ててきた歴史や文化が根付いている。しかし中には、そのまちが本来持っている魅力が新しい住民や観光客に伝わらず、人口減や産業の地盤低下という問題を抱えている地域もある。そこで、まちの魅力を盛り上げようと地域や企業が一体となり進めている各地の “プラスワン〟の活動に迫った。
※今後、デザインを含め変更の可能性があります。提供:ジャパネットホールディングス
大型複合施設「長崎スタジアムシティ」誕生 長崎をスポーツのまちに
今月14日、ジャパネットグループのリージョナルクリエーション長崎が企画・運営する「長崎スタジアムシティ」がオープンする。サッカースタジアムを中心に、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスなどが集まる大型複合施設の誕生により、長崎に「スポーツのまち」という新たな顔が加わろうとしている。
スポーツによるまちづくりで地域の活性化へ
異国情緒に満ちた人気の観光地・長崎市に、新たなランドマークが姿を現そうとしている。JR長崎駅から徒歩約10分、東京ドーム1・5個分の広さを誇る「長崎スタジアムシティ」だ。プロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」のホームとなるスタジアムとプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームとなるアリーナ、日本初のサッカースタジアムビューホテル、食べる・学ぶ・遊ぶが詰まった商業施設、県内最大級のオフィスビルなどで構成される大型複合施設である。
事の始まりは2017年、通販大手のジャパネットホールディングスがV・ファーレン長崎をグループ会社化したことだ。それを機に同社は通信販売事業に並ぶ二つ目の柱として、スポーツ・地域創生事業に乗り出した。その矢先、長崎市が三菱重工業工場跡地の再開発を目指して「長崎・幸町工場跡地活用事業 土地活用事業者」を募集する。 「社長の髙田旭人が初めて工場跡地を見たとき、スポーツを中心としたまちづくりを通じて地域を活性化したいと考え、応募を決めました。事業者選定を受ける上で長崎スタジアムシティ構想が立ち上がり、その企画・運営会社として19年にリージョナルクリエーション長崎が設立されました」と同社プロジェクト推進部プロジェクトPR課課長の下釜紘士郎さんは経緯を説明する。
長崎市は歴史・文化・食など多彩な魅力を有する一方、転出超過が全国の市区町村でワースト上位になるなどの課題を抱える。地域に新たな魅力と雇用を創出し、それを広く発信して人を呼び込もうと、民間主導のプロジェクトが始動した。
競技のない日にいかに人を呼べるか
スポーツと地域創生を両立しながら収益を上げていくために、V・ファーレン長崎のほか、新たにプロバスケットボールクラブを立ち上げる。長崎県にはバスケット愛好者が多いことや、当時プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)の市場が成長していたことを受け、アリーナのメインコンテンツにしようと考えた。
施設の企画・運営をする上で、国内外の施設を視察してきた。例えば、北海道北広島市にある「エスコンフィールドHOKKAIDO」だ。北海道日本ハムファイターズの本拠地となる野球場を中心とした施設で、スポーツの種類こそ異なるが、同社のプロジェクトと似ている。また、Jリーグ・サンフレッチェ広島のホームとして今年2月に開業した「エディオンピースウイング広島」や、広島東洋カープの本拠地のマツダスタジアムにも足を運んだ。 「いずれの施設も、注目したのは競技のない日にいかに人を呼べるか、そのためにどのようなコンテンツをちりばめていくかです。また、駅から歩いて来てもらうには、どのような仕掛けが必要かなども大いに参考になりました」
ちなみに、V・ファーレン長崎のホームゲームが諫早市で行われるとき、諫早駅からスタジアムまでの道のりには、地域の商業者の協力により「V・ファーレンロード」というおもてなしロードが形成される。それを長崎にも継承できるように行政や商工会議所などと話し合いを重ね、周辺地域の整備と連携強化を図っている。
人を呼び込み各所に人を送り出す
施設運営のソフト面で注力したポイントは“待たせない”ことだという。特にサッカー開催時には一度に多くの来場者が見込まれることから、観戦中でも携帯がつながるように自前の専用Wi-Fiを完備した。混雑が予想される飲食店などでは注文にモバイルオーダーを導入して並ばなくても買えるようにし、会計においてもキャッシュレスに対応するなどICT化を進めている。また、情報発信ツールとして専用アプリも開発した。アプリに会員登録すると、施設に関するさまざまな情報がオンタイムで得られる。 「何でもできる施設なので、いかに来場者に『こんなことがしたい』と思ってもらえるか、そのための適切な情報を届けられるかが重要です。例えば、家族連れが最初はそれぞれしたいことを堪能し、その後、皆でサッカー観戦を楽しんで満足して帰れるような、そんな施設にしたいと思っています」
24年9月現在、すでにアプリのダウンロード数は37万人、会員登録者数は33万人に上っており、いかに期待を寄せているかがうかがえる。それに応えるためにも、下釜さんはサッカーやバスケなどの試合がある日とない日それぞれの楽しみ方をアプリやSNSで発信し、各地を専用キャラバンで回るPR活動を展開している。 「地域の人や商業者から『一緒に盛り上げていこう』と言われています。魅力的なコンテンツを提供して、来場者に満足してもらうことが目下の目標ですが、今後は来場した市外県外の方やインバウンドを、地元の名所や商店街などに誘(いざな)うハブ施設の役割も担っていきたい」と今後の抱負を語った。
会社データ
社 名 : 株式会社リージョナルクリエーション長崎
所在地 : 長崎県長崎市幸町7-1
HP : https://corporate.japanet.co.jp/company/outline/rc-nagasaki/
代表者 : 岩下英樹 代表取締役社長
従業員 : 669人
【長崎商工会議所】
※月刊石垣2024年10月号に掲載された記事です。