今年度のYEGフラッシュは、商工会議所(親会)とYEGの良好な関係をご紹介します。タイトルの「藍と青」は、渋沢栄一翁の生家の家業が藍農家であったことから、藍を親、青をYEGとし、一般的にいわれる師弟のことではなく、「君子曰く、学は以て已(や)むべからず(学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されて優れたものになる)」という本来の意味に立って取材します。
熊本県の北西部に位置している荒尾市は、かつて炭鉱のまちとして知られ、「万田坑」が世界文化遺産に登録されている。また民俗芸能である「野原八幡宮風流」がユネスコ無形文化遺産、有明海沖の「荒尾干潟」がラムサール条約湿地に登録など、世界基準の文化と自然を三つも有している。その同市の活性化に奮闘している荒尾商工会議所(以下、親会)とその青年部(以下、YEG)は、長年にわたって良好な関係を築いている。その秘訣(ひけつ)を、キーマンである三者に聞いた。
地域のポテンシャルを生かし発展の原動力となる活動を
親会は977人の会員を有し、今年40周年を迎える荒尾YEGは54人のメンバーで構成されている。 「荒尾は人口が5万人くらいの規模の市ですが、世界基準を誇る文化と自然が三つもあり、年間100万人が訪れる九州最大級の遊園地『グリーンランド』も立地するなど、まちとしてのポテンシャルは高いと思っています」と、荒尾市の現状を語るYEG会長の山本翼さん。一方、「コロナ禍前、親会の会員数は860人でしたが、現在は977人と当時を上回っています。これも地域の発展に寄与しているわれわれの活動が認められている証しかな」と語るのは、親会の髙木洋一会頭だ。
父から子へ。親子で紡がれる荒尾のDNA
親会とYEGが主体となって、テイクアウトサービス「あらおスマイルDELI」事業や地域電子商品券「AraoPAY」を運営するなど、両組織は良好な関係を築いていることで有名だ。 「YEG総会への会頭の参加は恒常化しており、一方、親会の総会にYEGメンバーも参加するなど、相互に参加することで風通しを良くしています。また2024年度は、YEGの例会で親会の専務理事に講演していただくという初の試みも行いました」と山本会長。さらに、渡邊紀隆専務理事が「実は私自身がかつてYEGの担当職員でしたし、今は親会の専務理事という両組織を知る立場なので、実現したことかもしれません」と、両者の良好な関係の一端を話してくれた。 「親会の幹部に、YEG出身者やYEG会長経験者が多いのも大きいですね」と、山本会長。実際、役員・議員79人のうち、34人がYEG出身者で、さらにその中の14人がYEG会長経験者というから、かなりの人数だ。髙木会頭はその理由について、「よく事業継承が問題となっていますが、商工会議所の活動にも同じことが言えるのかもしれません。YEG会長経験者が親会の中心となり、交流を通じて組織づくりのDNAを次のYEGへと継承していく流れが自然にできています」と、目を細める。 「息子さんがYEGに入っているという親会の会員の方も結構いるのですよ。子どもの頃から父親が活動をしているのをそばで見ていますので、息子さんも自然にYEGに入会するようになります」と山本会長。親会の役員・議員79人のうち13人は、子がYEGに所属しているそうだ。この流れについて髙木会頭は、「親会とYEGの良好な関係の中で、地域ぐるみで後継者を育てるという意識が醸成されていると思います」と続けた。
最後は、山本会長が地元への思いを力強く語った。 「本年度のYEGは『One Step 新たな一歩を踏み出そう』のスローガンの下、地域経済の新たな一歩をわれわれが担う覚悟で活動しています」。
今、日本社会では事業継承という難問が降りかかっている。そのような中、地域経済を受け継いでいく器としての、荒尾の親会とYEGの良好な関係のカタチは、そういった課題を乗り越えていく一つの糸口となるかもしれない。
【荒尾商工会議所】
会 頭 : 髙木 洋一
会員数 : 977人
設 立 : 1955年
住 所 : 熊本県荒尾市大正町1-4-5
HP:https://arao-cci.jp/
【荒尾YEG】
会 長 : 山本 翼
会員数 : 54人
創 立 : 1985年
スローガン :「One Step 新たな一歩を踏み出そう」
HP:https://araoyeg.net/
1年間、ありがとうございました!
~メンバーより取材を通してひと言~
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報☆ブランディング委員会 石垣チーム/写真提供:荒尾商工会議所青年部