一般財団法人日本ファッション協会(JFA)はこのほど、「日本クリエイション大賞2024」の選考結果を発表した。同賞は、製品、技術、芸術・文化活動、地域振興、環境、福祉などジャンルを問わずクリエーティブな視点で生活文化の向上に貢献し、次代を切り開いた人物や事象などを表彰するもの。24年度は、108件の推薦案件の中から大賞1件と、各賞として「海風の匠賞」「水素社会創造賞」「衣料から医療へ賞」の3件を選定した。
大賞に輝いたのは、組み立てが簡単で短時間で設置できるインスタントハウス(簡易住宅)を開発した名古屋工業大学大学院教授の北川啓介氏と同大研究員で妻の北川珠美氏。このインスタントハウスは令和6年能登半島地震の被災地で避難所などに設置された。その数は、同年9月上旬までに段ボール製の屋内用約1100棟のほか、最大10人ほどが入れる防水仕様の屋外用(高さ4.3メートル、床面積20平方メートル)175棟。9月に発生した能登半島豪雨の際も新たに75棟を建設した。
同氏らがインスタントハウスの開発を始めたきっかけは2011年の東日本大震災。避難所を訪れた際、「仮設住宅を建てるのになぜ何カ月もかかるのか」と小学生に問われたことだった。
これを機に「安くてすぐに建てられる家」の開発を決意。試行錯誤の末、5年後に気球のように膜素材を空気で膨らませて屋根と壁を形成し、内側に空気含有量の高い断熱材を固着して、風速80メートルの台風にも耐えるインスタントハウスを開発した。
暑さ寒さに強く、中に入ると心やすらぐこの住宅は現在、世界中の被災地や紛争地、難民キャンプなどに設置され、人々に“希望”を届けている。
「海風の匠賞」は、セーリング競技で用いるセールを製造するノースセール・ジャパンに贈られた。同社のセールはパリ2024オリンピック混合470級で銀メダルを獲得した日本の岡田奎樹・吉岡美穂組をはじめ、混合級に出場した19艇のうち15艇が使用するなど高い製造技術を誇り、世界のトップ・セーラーから絶大な信頼を得ている。
また、「水素社会創造賞」は、水素エネルギー社会を目指し、廃アルミを原料として水素の製造に取り組んでいるベンチャー企業、アルハイテックが受賞。「衣料から医療へ賞」は、先天性心疾患の治療に用いる心・血管修復パッチ「シンフォリウム」を大阪医科薬科大学、帝人と共に開発した経編(たてあみ)メーカー、福井経編興業が受賞した。
なおJFAは、日本クリエイション大賞と同時に「第22回シネマ夢倶楽部表彰」の受賞作品も公表。推薦委員が選ぶ今回のベストシネマ賞第1位は『ソウルの春』(キム・ソンス監督、2023年、韓国)が受賞した。第2位には『BISHU~世界でいちばん優しい服~』(西川達郎監督、2024年、日本)、第3位には『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(アレクサンダー・ペイン監督、2023年、アメリカ)が選ばれた。
両賞の表彰式は、3月21日に開催する予定だ。
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