2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は4月13日の開幕から3カ月がたち、連日盛況を博している。さらに盛り上がることが見込まれる夏休みを前に、ぜひ来場をお薦めしたいパビリオンが、「REBORN」をテーマとした大阪ヘルスケアパビリオンである。今回は、同パビリオンの見どころと、そこに出展する関西企業の技術力の高さ、各社の狙いを紹介したい。
町工場の技術と遊び心を世界に向けて発信 八尾発、“おもろい”技術で万博に挑む
大阪府八尾市で自動車や通信・電力、建築土木関連機器などの部品を主に製造しているミナミダは、「リボーンチャレンジ」で八尾市が企画展示する「まちこうばのエンターテイメント!〜みせるばやおモデル〜」(9月16〜22日)に出展する。これまで培ってきた自社の技術力を活用して、会社の理念である「今をもっとおもろく」を、万博の展示でどのように世界に向けて発信していくのだろうか。
何ができるか分からなくてもとにかく飛び込んでみる
八尾市は自治体として「リボーンチャレンジ」の中で唯一、事業企画「まちこうばのエンターテイメント!~みせるばやおモデル~」が認定された。「みせるばやお」には「八尾のものづくりのワザを魅せる場」という意味が込められており、万博で同市のものづくりの面白さを国内外に発信していく。そこに出展する13社のうちの1社がミナミダである。 「八尾市の万博出展が決まったと聞き、自分が生きている間に地元で万博があるなんてことは一生に1回あるかないかのことで、目の前にチャンスがあるんだったら、何ができるか分からなくても、とにかく飛び込んでみようと、参加を決めました」と、ミナミダ社長の南田剛志さんは、出展を決めた理由について語る。
同社は、タイとメキシコにも工場を持ち、主に冷間鍛造(金属を加熱せず常温で圧力を加えて成形する加工法)の部品や複合加工部品を製造しており、売り上げの9割を自動車用部品が占めている。それ以外に自社商品のBtoC販売事業、ロボットSIer事業(工場用ロボットの導入サポート)、人材紹介業と、合わせて四つの事業を行っている。 「FactorISM(八尾市を中心にした、町工場でのものづくりの現場を体験・体感してもらうイベント)に4年前から参加していて、ここでものづくりの楽しさや魅力を伝えるとともに、従業員に自分たちは実はすごいことしているんやぞ、ということを理解してもらっています。万博への出展は、自社にとっては自分たちの技術に誇りを持てるとか、新たなチャレンジによる知識や経験の向上にもつながります。業界や地域にとっては、ここで働いてくれる人が増えることにつながる。それにより八尾市に知恵が集まり、八尾市全体で新たなイノベーションが生まれればと思っています」
自社の技術の強みが生かせて社会課題の解決にもつながる
自分の会社が万博に出展すると決まった時の気持ちを、営業部の石田芹奈さんはこう語る。 「話には聞いていましたが、いざ決まった時は、現実味がないというか驚きでした。大阪の端っこにある中小企業でも万博に出られるんだと。他社の人からも、そんな経験はなかなかできないですよと、うらやましがられました」
出展が決まると、次に考えなければならないのは「何を展示するか」だった。冷間鍛造の技術に自信があっても、自動車用の部品ではBtoBの展示会と変わらず、一般向けではない。社内でアイデアを出した結果、金属加工で培った技術を生かし、ヤシの木の皮をプレスしてつくる製品に決めた。 「自社の技術の強みが生かせて、中小の町工場がやったら面白そうで、社会課題の解決にもつながるものは何かと考え、これにしました。公園の砂場や海辺で、忘れられた子ども用のプラスチック製スコップやバケツ、フリスビーなどを見かけることがよくあります。プラスチックをヤシの木の皮に転用できれば、脱プラで環境にも良いし、うまくいけば商品化することもできます。そして、冷間鍛造の技術を金属以外にも生かせることを示し、中小企業でもおもろいことをしている会社があるんだぞ、と伝えたい。これを見てものづくりに興味を持つ人が増えれば、この業界に入ってくれる人が増え、当社への入社につながるかもしれませんから」と南田さんは笑う。
ヤシの木の皮をプレスしてつくるのは、お面やスコップなど子ども向けの玩具で、すでにお面は商品化できる状態になっている。さらに出展に向けて、製品のバラエティーを増やすために、これ以外のアイテムも開発している最中だ。
GW中のワークショップは子どもたちで大盛況
同社は、「大阪製ブランド製品」(大阪府のものづくり中小企業が製造する創造力にあふれる製品を大阪府知事が認定)の認定企業に名を連ねており、5月3日から5日までの3日間、万博会場内のギャラリーEASTにおいて公益財団法人大阪産業局が主催した、大阪製ブランド製品の認定企業が出展する「大阪信用保証協会プレゼンツ Waza Meet up Osaka」に参加し、ヤシの木の皮を使ったお面づくりのワークショップを開催した。 「つくって楽しく、お面をかぶって帰っても楽しく、アートとして家の壁に飾っておけるよう、お面の表面に色サインペンで色を塗るだけでなく、松ぼっくりや葉っぱを貼り付けたりして、自由にデザインできるようにしました。多くの方に参加していただき、大盛況でした。そこで楽しそうにものづくりをしているお子さんたちの姿を見て感動しましたし、やって良かったと思いました。9月の出展で、2日間だけワークショップを開催する予定でいます」と、南田さんは顔をほころばせる。
万博に出ることが自社にとってどのような効果があるかは数値で測定できないが、自社の面白そうな雰囲気が伝わればそれでいいと、南田さんは言う。それを今後の活動において社外とのコミュニケーションツールとしていけたらと考えているという。また社内においては、出展に向けた活動の中で「今をもっとおもろく」という企業理念に共鳴する社員が増え、これまで接点のなかった社員同士のコミュニケーション促進にもつながっている。 「出展まであと2カ月半となり、ワクワクしています。出展中に何が起こるか分からない。良い巡り合いがあればいいなと思っています」
会社データ
社 名 : 株式会社ミナミダ
所在地 : 大阪府八尾市上尾町5-20-1
電 話 : 072-998-6314
HP : https://www.minamida.co.jp
代表者 : 南田剛志 代表取締役社長
従業員 : 約360人(海外工場含む)
【八尾商工会議所】
※月刊石垣2025年7月号に掲載された記事です。