環境省・価値総合研究所「経済波及効果分析ツール」
自分たちの取り組みやビジネスの成功確率を高めるためには、データに基づいて客観的に外部環境を把握することが不可欠です。特に、自分たちの活動が、地域にどのような影響を与えているかを数値化(見える化)することは、対外的な説明力・説得力を高め、周囲を巻き込む貴重な武器となります。その代表的な指標が「経済波及効果」です。
ニュースでもよく取り上げられており、「今年の阪神優勝の経済波及効果は1084億円」といった記事を見た人も多いでしょう。行政が公金投入の説明などのために試算する場合も多く、大阪・関西万博では、大阪府市のみならず経済産業省も2024年3月に約2.9兆円の経済波及効果があると公表しています。こうした数字が示されると、公的関与の説得力が増し、民間としてもビジネスチャンスが明確となって参画しやすくなるという効果があります。
この経済波及効果は、地域という視点で特に有用な指標で、「観光客が増えると地域にこれだけの効果があるので、幾らまでは費用を投じる意味がある」という使い方ができます。
ただ、試算するためには相応のコスト(手間や費用)が必要と多くの人が考えています。確かに緻密に計算する場合はその通りですが、表題の分析ツールを使うことで、「茅ヶ崎市で観光客が1万人増えると経済波及効果(付加価値の増加額)は約2億円、市町村民税は約300万円(国税などを合わせると約4千万円)の効果がある」と簡単に試算できます。
商工会議所の活動の見える化を
操作画面②「地域施策の施策メニュー」をご覧いただければ分かりますが、「観光振興」だけではなく「空き家対策」や「域外への販路開拓」「中心市街地活性化」「企業誘致」など、まさに各地商工会議所が取り組んでいる事項が並んでいます。そして、表題ツールを活用することで、これらさまざまな取り組みの経済波及効果を試算することができ、税収効果を提示することも可能となります。
これまでの行政などとの交渉では、定性的に意義がある・必要であると主張することが多かったかもしれません。定性的な主張も非常に重要ですが、水掛け論になる可能性もあります。それを、この分析ツールを活用することで、“これだけの集客が見込めるので、地域にこれだけの経済波及効果があり、幾ら幾らの税収も見込める、その半分でも支援してほしい”という具体的な交渉に落とし込むことが可能になります。
ぜひ、表題ツールで取り組みの見える化を図り、周囲を巻き込む力にしてください。
なお、同じサイトに「地域経済循環分析ツール」があります。地域活性化や地方創生の実現に向け、地域経済循環を強く・太くするための検討に有用なツールです。次回、ご説明いたしますので、まずは一度、サイトにアクセスしてみてください。
(一般財団法人ローカルファースト財団理事・鵜殿裕)
