プレミアム化したオリオンビール
先日、沖縄の老舗ビールメーカー「オリオンビール」が東京証券取引所プライム市場へ上場。沖縄県の製造業としては初の上場となり、地域経済にとっても大きな節目となりました。
オリオンビール株式会社は、1957年に「沖縄ビール株式会社」として創立され、翌年ビール名を「オリオン」に決定。本社は沖縄県豊見城市に置き、ビール類の製造・販売を中心に、清涼飲料やホテル・観光事業も手掛けています。社名にもなった「オリオン」は一般公募で選ばれたもので、親しみやすさと沖縄のイメージを重視し、星座のオリオン座から命名されました。
地元シェアが8割もあり、観光客にも愛されるビール。観光客の認知度は95%超で、観光中に大多数の人がオリオンビールを飲みます。沖縄の魅力をまとってプレミアム化された地域ブランドといえます。確かに沖縄を訪ねた時に他のビールを選ぶ選択肢は思い付かなかったかもしれません。いつもオリオンビールを注文していたように記憶しています。それくらい、ビール=オリオンが沖縄では定着しているのです。 上場後は地域ブランドから全国ブランドに向けた飛躍が期待されます。
希少性軸に成長 次のステップは海外
ただ、全国ブランドへの飛躍は簡単ではありません。すでにナショナルブランドと呼ばれる大手ビールメーカーのブランドとの対峙が必要です。全国で飲めるような状況になったら沖縄で飲むことに希少性が薄れ、地元の消費も減少するリスクがあります。故に多くの地域ブランドは全国を目指しません。
例えば、サッポロビールで北海道限定の人気ビールであるサッポロクラシック。1985年に誕生以来、年間売り上げは毎年ギネスを更新中。ならば、東京でも販売すればいいと考えがちですが、かたくなに北海道限定にこだわります。その希少性が確実な成長を支えているとサッポロビールの方も教えてくれました。
ビールに限らず、希少性を軸にしたマーケティングにより成長機会を得てきた地域ブランドは他にもたくさんあります。ところが全国ブランドを目指し、希少性を捨てた途端に売り上げが落ちてしまったケースが大半です。地域ブランドの成長ステップは全国ブランドではないかもしれません。
では、どこを目指すのか?
オリオンビールは世界を目指すとのこと。観光機会で沖縄ブランドに価値を感じている海外地域へマーケティングを開始しています。売り上げ好調で商品を輸出するほか、海外パートナーのライセンス生産もスタート。地域ブランドの成長ステップで参考になるアプローチです。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)