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不合理な原価低減要請は改善傾向 平成30年度取引条件改善状況調査 (令和元年10月7日 中小企業庁) 現金支払いは5割超 建設、卸・小売業は減少

(図1)不合理な原価低減要請をされたことがある事業者について現在の要請の有無

中小企業庁はこのほど、「平成30年度取引条件改善状況調査」の結果を発表した。当調査は、平成28年9月に策定・公表した「未来志向型の取引慣行に向けて(世耕プラン)」に基づく、取引条件改善に向けた取り組みの浸透状況や企業間取引の実態把握を目的に29年度から実施しているもの。調査は、製造業、サービス業、建設業、卸・小売業、金融業から、資本金規模や立地・地域を勘案して抽出した6万6000社(受注側6万200社、発注側6400社)を対象に行い、その32・5%に当たる2万1644社(受注側1万9427社(32・3%)、発注側2217社(34・6%))から回答を得た。調査期間は2019年1~3月。特集では、結果概要を紹介する。

世耕プラン重点課題

(不合理な原価低減要請の状況)

○発注側事業者から「毎年一律〇○%の低減」といった合理的な説明のない一方的な原価低減要請をされたことがあると回答した事業者のうち、「現在も要請されている」と回答した受注側事業者は24・6%。○産業別で見た場合、自動車産業では「現在も要請されている」割合が4割超、半導体・半導体製造装置産業、卸売業は3割超。(図1)

(不合理な原価低減要請の改善状況)

○不合理な原価低減要請を「過去に要請されたことがある」と回答した受注側事業者のうち、2割超が「平成29年、30年」の2年内で「改善された」と回答。

(不合理な原価低減要請の状況)

○発注側事業者からの不合理な原価低減要請の方法について、5割超の受注側事業者が「経済環境の変化を理由に協力依頼と称して原価低減を要請された」と回答。

○産業別で見た場合、建設業、小売業では「文書や記録を残さずに口頭で削減幅などを示唆した上で見積もりや提案を要請された」と回答した割合が高い。(図2)

(発注側事業者における不合理な原価低減要請の改善状況)

○過去に不合理な原価低減を要請したことがある発注側事業者に対して、改善状況を尋ねたところ、1割超の発注側事業者が「改善していない」と回答。

○改善していない理由を尋ねたところ、4割の発注側事業者が「実施・徹底のための具体的な手法が分からないため」と回答。

(支払い条件の改善状況)

○代金の支払い方法について、5割超の受注側事業者が「全て現金」で受け取っていると回答。平成29年度調査から微増。建設業、卸売業、小売業では減少。

○手形払いから現金への改善状況について、1割超の事業者が、「平成29年、30年内」の2年間で「現金払いに改善された」と回答。(図3・4)

(発注側事業者における支払い条件の改善意向)

○代金の支払い条件の現金化について、発注側事業者の3割超が「改善は考えていない」と回答。

○改善を考えていない理由について、4割超の発注側事業者が「自社が受注側となる取引において支払い条件の改善が進んでいないため」と回答。

○次いで、大企業では「社内の合意が難しいため」との回答が多く、中小企業では「現金払いとするための資金の確保や調達が困難なため」との回答が多い。

製品などの価格への転嫁状況

○平成30年度上期に適用した単価・料金の決定・改定の際、コスト変動分を製品などの価格へ転嫁できたか尋ねたところ、労務費については5割超、原材料価格は6割超、エネルギー価格は4割超の受注側事業者が「おおむね」または「一部転嫁できた」と回答。

○29年度に比べて労務費は「転嫁できた」割合が増加。原材料価格、エネルギー価格は「転嫁できた」割合が減少。

(昨年との比較・業種ごと)

○労務費は、トラック運送・倉庫、石油・化学、産業機械などが昨年と比べて転嫁できている。

○原材料・仕入価格は、トラック運送・倉庫、産業機械、素形材が昨年と比べて転嫁できている。

○エネルギーコストは石油・化学、トラック運送・倉庫が昨年と比べて転嫁できている。

資金の投資分野

(取引先の取引条件改善への投資状況)

○自社の経常利益や利益剰余金の増加による資金の投資先について、約7割の受発注事業者が「従業員の賃金の引き上げ」と回答。1割超の受発注事業者が「取引先の取引条件改善」と回答。

○「取引先の取引条件改善」と回答した受発注事業者について、中小企業では1割超、大企業では8・5%と、大企業で低くなっている。

商社などが介在する取引の有無

○1割強の受注側事業者が、商社などが介在する取引が「ある」と回答。製造業、卸売業では2割超。○介在させる際の発注側事業者からの説明について、約5割の受注側事業者が「調達に係る事務の合理化のため」と説明があったと回答。卸・小売業では「物流機能の効率化のため」が5割超。

(問題の有無)

○約2割の受注側事業者が、商社などが介在することにより取引に問題が「ある」と回答。特に小売業において約3割と問題が「ある」割合が高い。○約2割の受注側事業者が、商社などが介在することによって「販売価格が下がった」と回答。

外国企業との取引の有無

○約1割の受注側事業者が外国企業との取引が「ある」と回答し、そのうち約1割の受注側事業者が外国企業との取引で問題が「ある」と回答。 (図5・6)○放送・コンテンツ産業、アニメーション制作業については2割超が取引上の問題が「ある」と回答。

(取引上の問題)

○外国企業との取引における問題の内容として「不合理な原価低減要請」が5割超と最も多い。

(人手不足による取引への影響)

○5割超の受発注事業者が「人手不足」と回答。○5割超の受発注事業者が「売り上げ機会の逸失」「残業時間の増大」と回答。

中小企業における人手不足による取引への影響

○中小企業における人手不足による取引への影響については、製造業では「納期遅れなどのトラブル」や「残業時間の増大」が、サービス業では「売り上げ機会の逸失」が、建設業では「外注の増加などによる利益の圧迫」が、小売業では「品質・サービスの低下」が、他の業種と比べて割合が高い。

時間外労働の上限規制の認知状況と対応

○新たな時間外労働の上限規制導入について、いまだに約2割の中小企業が認知していない状況。そのうち小売業では3割超。また、中小企業の約1割が「対応は困難」と回答。

(対応が困難な理由)

○約8割の中小企業が「人手不足である上に採用も困難」と回答。○産業別で見た場合、製造業では5割超の中小企業が「取引先からの短納期発注や急な対応の発生が多い」と回答。

働き方改革の影響

○4割超の受注側事業者が、直近1年間で発注側事業者から短納期発注や急な対応を求められて残業せざるを得ない状況が「発生した」と回答。○受注側事業者へ「発注側事業者が働き方改革に対応することによって、今後、何らかの影響が及ぶ懸念があるか」と尋ねたところ、約4割が「急な対応の依頼が増加」「短納期での発注の増加」や「受注業務の拡大・営業時間の延長」などを懸念と回答。 (図7・8)

(今後の懸念)

○発注側事業者の働き方改革への対応による今後の懸念について、アニメーション制作業においては発注側の働き方改革による影響を懸念する割合が高い。特に「急な対応の依頼が増加」を懸念すると回答した事業者は4割超。 調査結果はこちらを参照。 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2019/191007Shitaukechousa1.pdf