障がい者福祉の新しい形をつくりたい
一般社団法人アプローズ 代表理事 光枝 茉莉子
都庁職員から福祉の世界へ
平成26年に8年間務めた東京都庁を退職し、障がい者福祉の世界に飛び込みました。現在は、港区で福祉事業所「アプローズ南青山」を運営しています。ここでは知的障がい・精神障がいなど障がいのあるスタッフが、常駐する職業指導員の技術指導の下でフラワーアレンジメントの製作・販売をしています。企業や個人からフラワーギフトを受注すると、その売り上げがスタッフの工賃(賃金)になります。「障がい者だからこそできる」斬新なデザインや色彩、緻密さを強みに、一つ一つ丁寧な商品づくりを行っています。
起業を決意したのは都庁在職中、障がい者の工賃アップ支援を担当したことがきっかけでした。3年間、都内に数百余りある施設へ毎日出向き、施設職員への聞き取りや現状の確認を行いました。一言で「障がい者施設」と言っても施設ごとに規模は異なり、業務内容も公園清掃、内職、パンやクッキーの製造販売など多様です。長い不況で運営に苦労する施設もあり、それを見ると胸が痛みました。
全国のこうした事業所の平均工賃は障がい者1人当たり月給1万4190円、時給176円です(厚生労働省の平成24年度工賃実績調査)。都内でも平均よりずっと低い工賃の事業所が多数あります。こうした状況に、「収益を確保しつつ障がい者も職員も生き生きと働ける、従来の福祉施設の概念を超えた事業所をつくりたい」との思いが湧き上がりました。公務員を辞めることに迷いはありましたが、現場と向き合うにつれ思いは確かな志に変わっていきました。
花を通じたウェルフェアトレード普及へ
「ウェルフェアトレード」という言葉があります。「Welfare=社会貢献」と「Fair trade=公正な取引」を掛け合わせた造語で、社会的弱者とされる人たちがつくる製品を適正価格で購入することによる社会貢献活動のことです。アプローズは、花という身近な素材を通じて誰もが手軽に社会貢献できるウェルフェアトレードの普及を目指しています。ただ、お客さまにボランティアで商品を買ってもらうのでは意味がありません。デザインも魅力的な商品を、正当な対価で提供したいのです。そのためには障がい者スタッフも商品に対する高い意識を持つことが必要です。彼らがつくった商品は職業指導員が厳しくチェックし、何度もやり直しになることもあります。でも、高い意識を持つことで彼らは自らの仕事に誇りを持ち、商品が世に出て感謝される喜びを知れば、それは自信につながります。「障がい者自らもプロ意識を持って働く」。これが、アプローズの目指す働き方です。
今後は花屋の路面店の展開も計画しており、スタッフの活躍の場とウェルフェアトレードの輪をさらに全国へ広めたいと考えています。アプローズとは青いバラのことで、花言葉は「夢かなう」。多くの障がい者が活躍できる未来を夢見て、これからも一歩ずつ夢の実現に取り組んでいきます。
法人データ
法人名:一般社団法人アプローズ
所在地:東京都港区南青山4―3―24青山NKビル2階
電話:03-6804-3623
創業:平成26年
事業概要:障害福祉サービス事業
HP:http://applause-aoyama.com/
※月刊石垣2017年4月号に掲載された記事です。
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