日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2015年12月1日号 中村恒夫

中国の大手ネット通販サイトは「独身の日」と呼ばれるセール日に1兆7千億円もの売り上げを達成した。成長鈍化が指摘される同国だが、驚異的な購買力は健在だといえよう。日本国内でも中国の消費者を相手にネット通販に乗り出す中堅・中小企業が増えている。少子・高齢化に伴い、国内市場に大きな伸びを期待できない以上、海外に打って出るのは当然のことと考えられる。

▼だが、チャレンジする前に、少しの間だけ立ち止まって考えてみてほしい。インターネットを通じた販売では、不良品を売りつけられたり、企業側が計画倒産したりして、消費者が被害を受けるケースが相次いで報告されている。その一方で、企業が損失を被ることもあり得るのだ。分割販売の場合、支払いを終えないまま、買い手が自己破産などにより姿をくらまし、商品を回収できないことがあると聞く。「ネット通販のモールを通じて売っているし、クレジットカード番号が分かっているから大丈夫」と言っても、そのカードで大量に商品を買い込み取引停止になったら、どうなるのか。

▼あるいは購入をめぐるメールのやりとりでウイルスに感染。最も大切な顧客情報を奪われ、これがネット上に拡散すれば、企業側の責任が追及されかねないことを注意しておくべきだろう。大手企業ばかりでなく、日本企業が関連したサイトにサイバー攻撃が浴びせられる可能性も否定できない。

▼もちろん、日本製品の品質の良さと円安による価格競争力の向上が見直されている今、国外に販路を広げる好機だともいえる。その際、すでに進出した企業が経験したトラブル情報を収集し、十分な対策を講じた上で、本格販売に乗り出すのが望ましい。

(時事通信社監査役・中村恒夫)

次の記事

コラム石垣 2015年12月11日号 中山文麿

中山文麿・政治経済社会研究所代表

最近の世界的な日本食ブームを背景として、地球の裏側にまで「活魚」を送る計画が進められている。生け捕りにした魚を炭酸ガスが入った海水の中で...

前の記事

コラム石垣 2015年11月21日号 丁野朗

公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗

各地を訪ねると、その町独特の「空気感」のようなものを感じる。だが、あらためて空気感とは何かと問われると答えに窮してしまう。山口県萩の城下...

関連記事

コラム石垣 2021年9月1日号 神田玲子

NIRA総合研究開発機構 神田玲子

新型コロナ感染症による医療現場の逼迫(ひっぱく)が、閾値を超えた。感染症の発生から1年半が経過した今も保健所の過重な業務量、低調なPCR検査、...

コラム石垣 2021年7月11日号 宇津井輝史

コラムニスト 宇津井輝史

アフリカで生まれた人類は、ユーラシアから南米の南端までを数万年かけて歩いて渡った。やがて海は、陸と陸を隔てるものから、つなぐものに変わっ...

コラム石垣 2021年7月1日号 神田玲子

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

新型コロナウイルス感染症との闘いを通して、各国が団結して行動する機運が生まれている。そう考える理由の一つが、グローバルな法人税制ルールの...