政府は12日、「第5回未来投資に向けた官民対話」を開催し、第四次産業革命やイノベーションについて議論した。日本商工会議所の三村明夫会頭は、日本の潜在成長力の引き上げには最先端テクノロジーの追及、ITやロボットの活用による中小企業の生産性向上が重要と強調。専門家による支援拡大を求めた。安倍晋三首相は、2020年までにロボット導入コストを2割削減し、ロボットシステム導入を支援する人材を3万人に倍増することを表明。IT化をサポートするため、今後2年間で1万社に専門家を派遣する方針も示した。
三村会頭は、中小企業のIT化が進まない要因として、ITを活用できる人材が社内にいないことや、導入のイニシャルコストが高いことを指摘。「専門家の支援拡大により、中小企業の社内人材の不足を補い、IT化やロボットの導入が中小企業の課題解決の具体的な手段と感じさせることが必要」と述べるとともに、ITコーディネーターの増員などにより、IT化やロボットを活用し、生産性を引き上げた好事例の横展開を求めた。
また、地域におけるイノベーション力の強化に向けた取り組みが一部の地域にとどまっている点について、地域における研究拠点や人材の不足、研究成果をビジネスにつなげ産業として集積していく仕組みの未整備が課題と指摘。研究拠点の整備、大学と企業をマッチングさせて商品化や販路開拓までを支援する仕組み、産学官連携のコーディネーター人材の育成を要望した。さらに、生産性向上策の一つとして、行政手続きの簡素化・効率化を要請した。
安倍首相は、第四次産業革命の実現の鍵として、オープンイノベーションの実践とデータ利活用を挙げ、産学連携の体制を強化し、企業から大学・研究開発法人への投資を今後10年間で3倍に増やす方針を表明。世界トップの教授陣や企業の研究施設を備えた産学の戦略研究拠点を来年度中に少なくとも5カ所つくる意向も示した。
データ活用については、企業や組織の垣根を超えてデータを収集・分析しビジネスにつなげるため、従来の対面・書面原則を転換し、「原則IT」のルールに変えて、日本が強みを生かせる分野でデータを共有・活用するプラットフォームをつくる考えを述べた。また、規制・行政手続き見直しについては、新たな成長戦略に反映させる方針だ。
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