わが国は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする万国博覧会を2025年に大阪市臨海部の夢洲(ゆめしま)で開催するため、現在その誘致活動を、2025日本万国博覧会誘致委員会が中心となって精力的に展開している。日本商工会議所においても、三村明夫会頭が同委員会の顧問を務めるとともに、本年9月に開催の日商会員総会で、万博誘致実現への協力を各地商工会議所に呼び掛けたところである。特集では、同委員会事務局の特別寄稿を紹介する。
■万博は未来の実験場
1970年の大阪万博は、1851年の第1回ロンドン万博以来、世界で100回以上開催されたさまざまな形式の万博の中でも、代表的な成功例といわれています。
6421万人という入場者数はそれまでの最高記録で、2010年の上海万博(7308万人)に抜かれるまで、40年もの間、塗り替えられることがありませんでした。
内容も、下図の「広まった商品やサービス」に示すように、今日の生活を先取りした技術が展示され、当時の国民の6割以上が「未来」を目の当たりにしたことになります。「万博は未来の実験場」と言われますが、この言葉どおり、万博は世界中の国々が未来を形づくるアイデアや技術を持ち寄って、数千万人という規模の観衆に具体的に見せる場です。
■企業の新たなフロンティア「持続可能な開発目標」(SDGs)
2025万博への日本政府の提案は、左図の概要に示すとおりです。
メインテーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」では、日本の優れた科学技術力で、国連の提唱する「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)を実現する未来社会の姿を示すことを提案しています。このSDGsには、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「安全な水とトイレを世界中に」など、従来の開発途上国向けの目標と共に、「全ての人に健康と福祉を」「働き甲斐も経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」など、先進国向けの目標も含めて、人類全体の課題を提示したものです。
SDGsの特徴は、従来型の政府援助だけでなく、民間企業の事業活動を通じた課題解決を期待していることです。社会の課題を解決することで、企業としても成長の新たなフロンティアを切り開く、すなわち江戸時代からわが国で言われていた「三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)」の事業精神で人類共通の課題解決に貢献しようということです。
現在、多くの企業で、SDGsをフレームワークとしてビジネス・フロンティアを探る活動が始まっています。また政府も「持続可能な開発目標(SDGs)に係る施策の実施について、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、総合的かつ効果的に推進するため」総理大臣を本部長とし、全国務大臣を本部員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置しています。
ここでSDGsに取り組んでいる企業事例をご紹介します。
一つは、左の漫画の事例です。高齢者や足の不自由な人の身体機能を改善し、また介護する人を助けるロボットスーツ。すでに700台以上が国内で使われているというものです。
もう一つは、アフリカの電力供給のない地域において、太陽電池で充電したLEDランタンを低価格で貸し出すシステムにより24万人に灯りを提供している事例です。
国内外を問わず、また企業規模やハイテク・ローテクを問わず、地球レベルでのさまざまな課題の解決に企業の挑戦が期待されています。
■誘致合戦勝利のために、ぜひとも個人会員登録を
2025年万博には、わが国のほかフランス、ロシア、アゼルバイジャンが立候補しており、来年(2018年)11月の博覧会国際事務局総会での開催地決定投票まで、誘致合戦が続きます。なかでも国民機運の盛り上がりは、重要な評価要素です。特にフランスは電子投票などで、既に約15万人もの支持を集めていることから、わが国もそれを大きく上回る個人会員登録数を目標としています。
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