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コラム石垣 2017年9月11日号 丁野朗

各地で「地域未来塾」などの人材塾に係わっている。そんな塾の一つに、広島県呉市の「くれ観光未来塾」がある。昨年末開講だが、今月、すでに6回目を迎えた。通常、この手の塾は、民間事業者や市民・NPOなどの若者が参加し、新たな事業を構想し、起業する手法を学ぶといったケースが多い。しかし、この塾は少々異なっている。全員が市役所職員なのである。それもの課から選抜または自ら志願した原則40歳以下の職員25人である。

▼その狙いはこうだ。仮に、民間事業者が、新たな事業を企画したとしよう。彼はその実現に向けて、店舗などの確保、資金調達、事業収支、事業人材の確保などに奔走するだろう。これは当たり前の話である。しかし、この事業が、例えば、港近くの歴史的赤れんが倉庫をリノベーションしてレストランを始めるといった内容だったとしよう。途端に用途規制や建築基準、消防、食品衛生といった関連法規など厄介な手続きが求められることになる。担当課が全て異なるから、交渉には多くの時間と労力がかかる。

▼行政職員は、配属課の職務には忠実である。よく勉強もしている。しかし、民間事業を総合的に支援するという発想は薄い。この塾には企画・商業・観光のほか、都市計画、生活衛生、港湾漁港、農林水産、住宅政策、土木、消防や文化振興など幅広い課の職員が参加している。その彼らに今、地域で必要な事業を構想してもらい、その実現のための施策と体系を考えてもらう。提案があった支援策のうち、優れたものは翌年度の新政策に反映させる。塾の狙いは、まさに民間事業支援のための政策、プラットフォーム的な支援策づくりなのである。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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