アベノミクスは、確実に成果を上げつつあります。就業者数は、100万人以上増えました。有効求人倍率は、23年ぶりの高水準です。倒産件数は、約2割減少しました。企業収益は、過去最高水準にあります。雇用、企業収益を中心に経済の好循環が生まれつつあります。
しかし、景気回復の実感は、まだ全国津々浦々には、届いていません。生まれつつある好循環を、民間主導の経済成長に確実につなげるため、過去最高水準の企業収益にふさわしい賃上げ、正社員化、民間投資の拡大を実現しなければなりません。
今年度賃上げを実施した中小企業・小規模事業者の割合は、昨年度の64%から68%に上昇しました。日本経済を支えているのは、何といっても、中小企業です。中小企業が元気にならなければ、日本は元気になりません。
中小企業が賃上げできる環境を整えるためには、大企業との取引条件も重要です。原材料価格の上昇分を適正に取引価格に転嫁するよう、大企業に呼び掛けるとともに、業種別の下請けガイドラインを改訂しました。
賃上げを持続的に実施できるためには、生産性が向上しなければなりません。政府は、この秋から、産業界との「官民対話」を行います。民間が目指すべき投資の方向性と、そのための政府の取り組みについて議論し、企業の大胆な経営判断を後押しします。
実は、過去3年間、中小企業の設備投資は、大企業の設備投資より増えています。中小企業の問題は、設備投資が生産性の向上に結びついていないことです。
大企業は、設備投資が横ばいですが、労働生産性を約1割伸ばしました。しかし、中小企業は、設備投資を約2割増やしながら労働生産性は、約3%しか伸びませんでした。
その背景には、さまざまな課題があります。研究開発が難しい。ブランド化や差別化が十分でない。後継者がいない。経営の相談相手がいない。安倍政権は、これらの課題の克服を支援してまいります。
中小企業にとっては、自前での研究開発は難しいといわれます。設備や人材に制約があるためです。そこで、中小企業と、大学などの研究機関との連携を支援し始めました。既に、成果が出始めています。
例えば、大阪・堺市の企業は、地元の大阪府立大学と連携して、半導体スライス技術を開発しました。ダイヤモンド粒子を付けたワイヤーを開発し、コストと加工時間を半減させることに成功しました。
ブランド化、差別化も課題です。各地域には、「ふるさと名物」が存在します。いわば「眠れる宝」です。
「甲州ワイン」は、本場のヨーロッパへの進出を果たしました。山梨県や甲州市は、事業者によるブランド化の取り組みを支援し、ワインをテーマとした観光にも力を入れています。「甲州フルーツマラソン大会」では、ゴール後にワインが振る舞われます。この「甲州ワイン」、官邸での晩さん会でも、外国のお客さまに喜ばれています。
こうしたブランド化や差別化は、全国的に見ると、まだ十分に進んでいるとはいえません。そこで、今通常国会で、法律を改正し、「ふるさと名物」の開発・販路開拓に取り組む企業を支援することとしました。地方には、まだまだ可能性があります。主役は皆さんです。ぜひ、地域活性化の道を切り開いてください。
今や、経営者の5割以上が60歳以上です。優秀な後継者の確保は、経営者なら誰しも頭を悩ませる問題です。今通常国会では、後継者が親族でなくても、親族である場合より不利にならないよう法律を改正しました。それでも後継者が見つからない中小企業に対しては、事業を引き継ぐ企業とのマッチングを支援しています。
商工会議所の皆さまに、全国34カ所の「事業引継ぎ支援センター」を担っていただいており、実績が上がっています。引き続きのご協力をお願いします。
販路の開拓や資金繰りなどを相談したいけれども相談先が分からない。こうした悩みを持つ経営者が多くいらっしゃいます。そこで相談内容に応じて支援機関や専門家を紹介する、「よろず支援拠点」を全国に整備しました。既に数多くの実績が生まれています。
北海道では、函館商工会議所と連携し、地元の「がごめ昆布」の加工業者が、対象として想定する顧客に訴求する点を明確にして商品開発に取り組んだことで、売り上げを増加できました。
皆さまには、こうした政府の支援を活用していただき、前向きな投資を生産性向上につなげていただきたいと思います。そして、政府は何をすべきか、どんどん注文を付けていただき、一層皆さまのお役に立てる支援策を用意したいと思います。
こうした取り組みを行っていく上で、地域社会、地域経済に根ざした商工会議所は、大きな役割を担っています。三村会頭の力強いリーダーシップの下、皆さまのお力で、地方創生、そして日本経済再生に向けた動きを強力に進めていただきたいと思います。
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