わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、全国に設置され、電話やメール、ウェブサイトにより無料で相談できる「下請かけこみ寺」(本部:公益財団法人全国中小企業振興機関協会)に寄せられた「親事業者の4つの義務と11の禁止行為」に関する問い合わせの中から、参考になる事例をQ&A形式で解説します。今回は、「禁止類型」の割引困難な手形の交付・支払い遅延および不当な経済上の利益の提供、減額について紹介します。
Q.A社(資本金:1000万円)は、B社(資本金:8000万円)から機械金属加工の注文を受けていますが、注文先のB社の支払いが、当月末日締め切り・翌月末日支払いの支払制度です。なお、支払いは手形でなされております。手形のサイトが150日です。このような支払い方法は、問題ないのでしょうか。
A.A社とB社との取引は、下請法の資本金区分を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請法が適用される取引と考えられます。親事業者は給付を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと下請法違反となります。また、支払いが手形による場合は、手形サイトが120日(繊維業は90日)を超えるような長期手形は一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形とされており、それを交付することによって下請事業者の利益を不当に害すると、下請法違反となります。なお、平成28年12月14日付で、中小企業庁長官と公正取引委員会事務総長の連名で関係事業者・団体代表者に対して、下請代金の支払いについては、できる限り現金払いとすることなどの要請文が発せられています。
Q.A社(資本金:1000万円)は、B社(資本金:1億5000万円)から材料支給を受け、これを組み立てて納品する業務を行っています。支給品の検査と不具合があった場合の対処はA社が行っていますが、その費用は契約上B社の負担となっています。B社の支給品には不具合が多く、検査に多額の費用と時間がかかっているのですが、2年ほど前にB社の担当者が変わったことから、突然検査費用が支払われなくなり、A社の負担となってしまいました。検査費用を元どおりに負担してもらうには、どうしたらよいでしょうか。
A.A社とB社との取引は、下請法の資本金区分を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請法が適用される取引と考えられます。本来B社が負担すべき検査費用をA社に負担させることは、下請法で禁じる「不当な経済上の利益の提供要請」の禁止に該当するおそれがあります。また、検査費用を下請代金から控除した場合、やはり下請法の禁じる「下請代金の減額」の禁止に該当し、問題があると考えられます。B社には下請法の禁止行為内容などを説明して、検査費用を契約どおり負担するよう求めるとともに、支給品に不具合が生じないように品質の管理をきちんと要求すべきと思われます。