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テーマ別企業事例 ウィズコロナのビジネス戦略 今だからこそネット販売で稼ぐ

事例2 SNSによる情報発信などでコロナ禍でもネット販売は7割アップ

香蘭社(佐賀県西松浦郡)

有田焼で知られる佐賀県有田町にある香蘭社は、陶磁器や碍子(がいし・電線と支柱の間を絶縁する器具)などを製造・販売するセラミックメーカーである。同社の優雅で色鮮やかな陶磁器は「香蘭社調」と呼ばれ人気が高い。高級陶磁器はデザインだけでなく手触りや質感も重視されるため、実店舗での販売以外は難しいと考えられていたが、同社はネット販売に取り組み、コロナ禍でも売り上げを伸ばしている。

「香蘭社オンラインショップ」のサイト。数多くの陶磁器製品が掲載されている

顧客情報を新製品開発に生かす

有田焼は今から400年ほど前の1616年に、朝鮮半島から来た陶工の李参平がこの地で磁器を焼いたのが始まりとされている。その約70年後の1689年に初代・深川栄左衛門が有田で焼き物を始め、それが今の香蘭社につながっている。今では陶磁器、碍子、そしてファインセラミックス(産業用に新たな特性や機能を持たせた製品)の三つを主な事業としている。現在は十五代目当主の深川祐次さんが社長を務めており、深川さんが副社長時代に主導して、オンライン販売を始めた。

「2008年に大手のネット通販で販売するようになったのが最初です。パソコンやインターネットが一般に普及していて、将来的にはネットでも販売できるのではないかと思い、とりあえず始めて様子を見てみようと思ったのです」

実は深川さんも最初は、焼き物は目で見て手で触ってもらわないとなかなか売れないだろうと考えていた。そこで、製品の大きさを実感できるよう比較できるものを脇に置いたり、手に持ったりした写真を掲載することで、できるだけ写真だけでも製品の大きさや質感が伝わるよう工夫した。

ネット販売は、それなりの売り上げはあったものの、大きな問題があった。ネット通販サイトの手数料が割高に感じたことと、顧客情報が入ってこなかったことである。顧客情報はネット通販サイトが管理していたからだ。顧客情報があれば、どんな人がどんな製品を買うかが分かり、新製品開発も進めやすい。また、メールなどで新製品情報を送ることもできる。そこで、13年からは自社サイトでの販売を始めることにした。

料理レシピのサイトで陶磁器の魅力を発信

香蘭社の自社サイトの構築、運営を担当しているのは、美術品事業部の北村秀幸さんである。

「自社サイトはすでにあったので、ネット上の販売システムを新たにつくる必要があり、それは外部の業者に委託しました。受発注の流れ、デリバリー、流通はすでに確立されていたので、あとは、膨大な数のネットショップの中でどうやって香蘭社の名前を見つけてもらうかが一番の課題でした。そこは、専門家にSEO対策(検索サイトで検索の上位にくるようサイト内容の調整をすること)のアドバイスをいただきました」

とはいえ、自社サイトでネット販売を始めてすぐに製品がどんどん売れるようになったわけではない。売り上げが対前年比を上回るようになったのは、ここ2、3年のことである。それは、ここ数年で普及してきたSNSを活用し、積極的に情報を発信するようになったこととつながっている。

「サイトを見てもらうのを待っているだけでは、なかなか集客につながりません。弊社もSNSで情報を発信していくにつれ、会社の名前の露出量が多くなり、それが集客につながっていきました。これまで香蘭社の顧客は50代以上の女性がほとんどだったのですが、SNSを活用することで若い人たちにもアピールできるようになりました」(北村さん)

また、料理レシピのコミュニティーサイトにも公式ページを設け、さまざまな料理のレシピとともに、その料理の盛り付けに同社の製品を使っており、そこからの集客も狙っている。陶磁器の多くが食器なので、料理と一緒の写真の方が、買う人にとってもその製品のイメージが湧きやすいからだ。

「WeB有田陶器市」を機にネット販売に注力する店舗も

そのような努力もあり、コロナ禍で実店舗での売り上げが減る中、ネット販売は前年比で7割も伸ばし、陶磁器全体の売り上げの1割を占めるまでになった。

「コロナ禍で落ちた売り上げをカバーするほどまではいきませんが、やっていてよかったです。今年も、毎月の売り上げ前年比5割アップという目標を、3月中旬時点での段階ではクリアしています」と深川さんは頬を緩める。

毎年ゴールデンウィークに開催して多くの人が集まる有田商工会議所主催の有田陶器市が、昨年はコロナ禍で中止に追い込まれた。そこで同所は、インターネット上で「WeB有田陶器市」を開催することにした。深川さんは有田商工会議所の会頭も務めている。

「有田の120店舗が参加し、その多くがネット販売は初めてでした。窮余の策で始めたものでしたが、評判が良く、全体の売り上げも2億5千万円と想定以上でした。多くの店舗が今後はネット販売に力を入れていくと喜んでいました」

コロナ禍はまだ予断を許さない状況にあり、香蘭社は今後もネット販売に力を入れていくという。

「さらに目立つサイトにするため、動画を取り入れたり、インフルエンサー(SNS上で多くのフォロワーを持つ人)に依頼して商品を紹介してもらったりすることを考えています。弊社は焼き物業界では多少名を知られていますが、一般の方にも香蘭社と聞けば焼き物のブランドと思ってもらえる存在になりたいですね」

コロナ禍でネット販売が売り上げを伸ばしていった香蘭社のビジネスは、中小企業にとってECがウィズコロナのビジネス戦略として有効であることを示している。

会社データ

社名:株式会社香蘭社(こうらんしゃ)

所在地:佐賀県西松浦郡有田町幸平1-3-8

電話:0955-43-2131

HP:https://www.koransha.co.jp/

代表者:深川 祐次 代表取締役社長

従業員:220人

※月刊石垣2021年5月号に掲載された記事です。

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