政府の教育再生実行会議はこのほど、学習者主体の教育、デジタル化の推進などを柱とするポストコロナ期における新たな学びの在り方を示す第12次提言を取りまとめ、菅義偉首相に提出した。菅首相は、オンライン事業の拡大や学校現場における一層のデータ活用などの提案を評価。提言の着実な実行とフォローアップを閣僚らに指示した。
提言では、ポストコロナ期における教育の姿として、個人と社会全体の幸せ(ウェルビーイング)実現に向けた「学習者主体の教育への転換」および「デジタル化」を2本柱として挙げ、①初等中等教育②高等教育③教育と社会の連携④データ駆動型教育への転換の四つの視点から、新たな教育の在り方について提案した。
初等中等教育においては、コロナ禍でオンライン対応の遅れや教育格差が顕著となったことから、1人1台端末の本格運用に伴う環境整備、学習状況を管理するマネジメントシステムの活用促進や同時双方向型のオンライン指導を可能にするオンライン学習システムの全国展開などデジタル化の加速を提案。また、「新しい学び」に対応した指導体制として、少人数によるきめ細かな指導体制・施設設備の整備、教師の質の向上と多様な人材の活用を提案した。
高等教育においては、遠隔・オンライン教育を推進すると同時に、修行年限の柔軟化、産学連携による職業教育機能の強化・リカレント教育(社会人の学び直し)の充実といった学びの複線化・多様化の必要性を提案したほか、グローバル化に対応した教育環境の実現と学生のグローバル対応力の育成、優秀な外国人留学生の戦略的な獲得、大学などの国際化・多様化に対応した秋季入学・4学期制、通年採用の推進などを盛り込んだ。
教育と社会の連携による学びの充実のための方策としては、大学などの入学・卒業時期の多様化・柔軟化のため必要な支援の実施、併せて産業界における採用・雇用慣行の改革の推進、情報発信などを求めている。
さらに、子どもたちの創造的活動を支援するための学校・家庭・地域や企業の取り組みとしてコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と「地域学校共同活動」の一体的推進、図書館・公民館などの社会教育施設におけるICTの有効活用を提案。教育に大人が関わりを持てるようテレワークなどの新たな働き方やワーク・ライフ・バランスの推進なども求めた。
データ駆動型教育への転換に向けた政策立案と基盤整備については、現状を的確に把握した上で、政策の効果を検証しつつ進める必要があると指摘。個人と社会全体のウェルビーイングの実現を目指すためにも、児童生徒、教師、学校・自治体などの行政データなど各種データを効果的・効率的に取得、活用して政策を立案するべきとの考えを示した。
また、ユニバーサルIDやマイナンバー制度の活用も含めた認証基盤の整備、教育データの分析や教育データプラットフォームの仕組みを検討する調査・分析・研究体制の構築も提案した。
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