政府はこのほど、「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)の第3回会合を首相官邸で開催した。岸田首相は、来年の春闘で、業績がコロナ禍以前の水準を回復した企業について、「3%を超える賃上げを期待する」との考えを表明。同時に「民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組む」と述べた。
会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、中小企業を取り巻く事業環境と賃上げについて「K字型回復の中、中小企業でも付加価値を増加させている事業者には、ぜひとも積極的な賃上げを期待する」との考えを表明。一方で、「業種によっては厳しい事業環境が続き、交易条件が悪化している中で、賃上げ原資となる付加価値余力に乏しい中小企業に対して、一律に賃上げを求めることは不適切」との考えを強調した。
また、「人手不足が顕在化する中で、市場に委ねても、防衛的賃上げのようなケースが増える」と指摘。「ポストコロナを見据えた将来への投資などの動きを、無理な賃上げによって妨げるべきではない」と述べた。
さらに、「真に必要なのは、持続的な賃上げのモメンタムであり、それは一時的な支援対策だけで実現できない」と主張。官民連携の下、デジタル化などによる中小企業の生産性向上や、「パートナーシップ構築宣言」の推進による取引価格の是正に粘り強く取り組むことで、賃上げできる状況をつくり出すことが重要との考えを示し、「中小企業の生産性引き上げが日本全体の生産性を高め、経済を成長させる」と述べた。
岸田首相は、「成長の果実を国民一人一人が実感できる新しい資本主義を実現する鍵は人への投資にある」と述べ、賃上げ企業への支援を強化する税制措置、デジタル人材育成に向けた3年間で4000億円規模の施策パッケージ創設などを実施する考えを表明。取引適正化のための監督強化などにも取り組む考えを示した。
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