政府はこのほど、「経済安全保障法制に関する有識者会議」の初会合を開催した。委員は日本商工会議所の久貝卓常務理事、経団連、経済同友会の代表など経済界、国家安全保障局(NSS)前局長の北村滋氏など安全保障、外交の専門家ら18人で、座長には慶應義塾大学大学院の青木節子教授を選出。政府は、有識者会議の議論を踏まえ、2022年の通常国会への法案提出を目指す。
冒頭、あいさつした小林鷹之経済安全保障担当大臣は、「岸田内閣では、経済安全保障を最重点課題の一つに位置付け、関係閣僚から構成する経済安全保障推進会議を立ち上げた。岸田総理からは、法案について検討を行う有識者会議を立ち上げるよう指示があった」と会議設置の経緯を説明。検討の方向性について「重要物資や原材料のサプライチェーンの強靭(きょうじん)化」「基幹インフラ機能の安全性・信頼性の確保」「官民で重要技術を育成・支援する枠組み」「特許非公開化による機微な発明の流出防止」の4分野を示し、「経済安全保障に係る法制の在り方について提言してほしい」と要請した。
出席者からは、「経済安全保障といっても、一般の人にはなじみがない。どのような背景があって立法措置が必要なのか、分かりやすい説明が必要」「規制対象の明確化、規制内容の国際協調についてお願いしたい。日本企業だけが対外取引において不利になるということがないようにする必要がある」といった指摘があった。また、「技術力強化へさらに強い対策が必要。補助金なども大事だが、併せて制度的な改革も大変重要」などの声もあった。
意見交換後、小林大臣は、「経済安全保障イコール規制と捉えられがちだが、経済安全保障は必ずしも規制をかけて守りに徹するものではない」と述べ、自由な企業活動、研究活動の重要性を強調。「経済安全保障の取り組みについて、国民の皆さまに分かりやすいメッセージを発していかなければならない。海外に向けてもわが国の考えを的確に発信していく」との考えを示した。
経済安全保障法制に関する有識者会議の検討4分野
サプライチェーン
国民生活や産業に重大な影響が及ぶ状況を回避すべく、重要物資や原材料のサプライチェーンを強靭化
基幹インフラ
基幹インフラ機能の維持などに係る安全性・信頼性を確保
官民技術協力
官民が連携し、技術情報を共有・活用することで先端的な重要技術を育成・支援する枠組み
特許非公開
イノベーションの促進との両立を図りつつ特許非公開化の措置を講じて機微な発明の流出防止
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