30自治体がSDGs未来都市に
内閣府が、2022年度の「SDGs未来都市」として、先導的な宮城県大崎市や新潟県など30自治体を選んだと発表しました。大崎市は、世界農業遺産に認定された「大崎耕土」が持つ水田や屋敷林「居久根(いぐね)」など、生物多様性などの環境面の資源を活用しながら、社会や経済への好循環を与える取り組みを展開するとのこと。市としても市役所庁舎にSDGs未来都市に認定されたことを示す懸垂幕をかけるなど、大いに盛り上がりを見せているようです。
今後は認定を目指して市町村間の競争が起きてくるかもしれません。まちづくりでもSDGsが当たり前に語られる時代になったことを痛感させられます。
ちなみにSDGsとは持続可能な開発目標のこと。簡単に言うと、世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった社会課題を、世界のみんなで30年までに解決することを目指すもので、15年9月の国連サミットで採択されました。
採択後の取り組みは欧州が先行しており、最近のSDGs関連ランキングでは上位を独占状態です。日本はSDGsの取り組みは後れを取っているため、欧州に一歩でも追い付くために、歩みを早めなければならないと感じている人が多いかもしれません。
目標達成のヒントは全国に存在
でも、考えてみれば、畳や障子など自然素材が多用されたシンプルな家屋に暮らし、季節の移り変わりに寄り添い、自然と共生し、働く。そのような生活を日本は昔からしてきました。普通の暮らしの中にSDGsが根付いていたといえます。SDGsの目標を達成するヒントは、国内のあちこちに存在しているのです。
そこで、日本を旅して、SDGsの学びにつながる旅=ツアーを企画してみてはどうでしょうか。例えば、海を豊かにするために山に木を植える活動を体感する。魚介類を自然の営みの中で増やしていくには、水を浄化したり、養分を蓄えたりする森林の機能が有効です。例えば、カキやホタテの養殖などで知られる三陸海岸。森の豊かな栄養分が河川などによって海に運ばれ、カキなど海の生き物の栄養源になっています。そこで豊かな海を育むために、森づくりの活動が盛ん。こうした取り組みは昔から続いていますが、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」につながります。
他にもSDGsの目標達成のヒントになりそうな取り組みが行われている地域がたくさんあります。
ちなみにSDGsに関心が高い地域は首都圏などの都市部とのこと。企業として取り組みが必須の状況になり、自分事として、関心が高いのでしょう。SDGs体感ツアーが企画できそうな地域は新たな観光事業として検討してみてはどうでしょうか。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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