文部科学省はこのほど、2022年版の「科学技術・イノベーション白書」を閣議決定した。白書はわが国の研究力を分析した特集の第1部と年次報告の第2部の2部構成で、第1部では、科学技術立国の実現に向け、わが国の研究力の現状と課題を分析するとともに、科学技術・イノベーション政策の変遷を概観。研究力を支える人材育成・研究環境の整備、大学の研究力強化に向けた新たな事業(大学ファンド、総合振興パッケージ)や、研究人材に関する施策の強化、イノベーション創出に向けた「知」の社会実装に向けた取り組みなどを紹介している。
研究力については、「論文指標」「研究者の研究時間割合」「研究人材」「研究開発費」「科学技術予算」「国際頭脳循環」「特許」などの各種データについて、その推移や諸外国との国際比較などにより、日本の研究力の現状と課題を分析。大学教員などの研究時間割合の低下、研究資金の確保などの課題が浮き彫りになっている。
研究開発費については、大学部門、公的機関部門、企業部門のいずれにおいても、中国や韓国が大きく伸びる中、日本は停滞。特に大学部門について、他の主要国との差が大きくなっている現状が明らかになっている。
大学の研究力強化に向けて新設した10兆円規模の大学ファンドについては、その運用益による大学の研究基盤への長期的・安定的な支援を可能にするものとして期待を表明。「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」では、大学の強みや特色を伸ばす戦略的経営を後押しするとともに、特定の強い分野における人材流動や共同研究などを促進していくことなどが示された。
研究人材に関する施策については、博士後期課程学生を含む若手研究者の支援や女性研究者の育成などの取り組みを紹介。研究環境については、研究DXの推進や大型研究施設の整備、科学技術の国際展開の戦略的推進などの具体策を提示した。
研究で得られた「知」を社会実装し、イノベーションを創出するための取り組みなども紹介。人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する大型研究プログラムや、産学官連携で、基礎研究から実用化・事業化まで推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)なども示した。
詳細は、https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202201/1421221_00001.htmlを参照。
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