厚生労働省は8月23日、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した2022年度の地域別最低賃金の改定額を公表した。8月2日に厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した「地域別最低賃金額改定の目安について」を参考に、各地の審議会で審議した結果、改定額の全国加重平均は961円となり、昨年度の930円から31円の大幅な上昇。1973年度に目安制度が始まって以降、過去最大の引き上げ額となっている。
全国47都道府県のうち、中央最低賃金審議会が示した引き上げ額の目安に沿って改定したのは25都府県で、目安額を3円上回ったのは、岩手、鳥取、島根、高知、沖縄の5県。差額が2円だったのは山形、愛媛、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の8県で、同1円は北海道、青森、秋田、茨城、新潟、山梨、兵庫、山口、徳島の9道県だった。
最高額となった東京都(1072円)に対する最低額(853円)の比率は79・6%。昨年度の78・8%を上回り、8年連続で比率が縮少した。
8月2日の中央最低賃金審議会の答申では、金額に関して、使用者側と労働者側の意見が一致しなかったことから、公益委員の見解を小委員会報告として地方の最低賃金審議会に提示。政府に対しては、賃上げしやすい環境の整備、生産性向上支援、下請取引の適正化などを求めている。
日本商工会議所の三村明夫会頭は8月2日の答申について、「消費者の生計費に対する足元の物価上昇の影響を強く考慮する一方、企業の支払い能力の厳しい現状については十分反映されたとは言い難い。最低賃金の改定による影響を受けやすく、コロナ感染再拡大の影響が懸念される飲食・宿泊業や、原材料・エネルギー価格など企業物価の高騰を十分に価格転嫁できていない企業にとっては、非常に厳しい結果である」とのコメントを発表。政府に対しては、「価格転嫁対策をより一層強力に進めていただくとともに、生産性向上に取り組む中小企業を支援する各種施策に十分な予算を確保するなど、中小企業が自発的に賃上げできる環境整備を強く求める」と要望している。
今回、答申された改定額は、異議申し出に関する手続きを経た上で、都道府県労働局長が決定。10月1日以降、順次発効される予定となっている。
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