消費者が変化 店選びの基準厳しく
コロナ禍は消費を大きく変え、「食料品×テイクアウト×酒類」で充実した食事体験を重視する人を増やしました。「これまでの日常」でやれていたこと(外食、人に会う)ができなくなったため、ストレスの発散で、おいしくて少し高いものを買って、満足感を得ようとしていたからなのでしょう。
当方も少々値の張るワインや高級食材のおつまみを購入。自宅で飲む機会が何回かありました。平日の夜は外食が当たり前の生活がなくなり、そのまま帰宅しても何となくスッキリしない。その解消であったような気がします。 ならば、外食が解禁されたので、生活テンポは元に戻るのか? 戻ろうとしますが、同じようには戻らないでしょう。これまでの日常にもストレスがありました。そのストレスを再び背負うように外食したくはない。心地よい程度に、限定的な再開となる人が大半ではないでしょうか。
例えば、二次会には行かない。お誘いがあっても、必要性の高い会食しか行かない。こうした発想で外食が再開されるので、コスパの高い料理を食べたい、自宅の食事では得られない満足感のあるサービスや施設のレベルで探したいなど、店選びの基準も厳しくなります。
モバイルオーダーで 価格抑え人気店に
ただ、飲食業界からすれば、この基準に合わせた店を目指すことは簡単ではありません。人件費や材料費の高騰が続き、コスパの点で期待に応えることが難しくなってきたからです。消費者はコロナ前の価格帯イメージで少しだけレベルアップした食事をしたい。でも、価格は随分と上げざるを得ない……。このようなギャップが生じているわけです。
このギャップを解消する術(すべ)として注目度が高いのが、DXの活用です。例えば、国内クラフトビールの先駆けともいえる「ヤッホーブルーイング」の多彩なビールが楽しめるビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」は、モバイルオーダーシステムを導入。料理の提供時においしい食べ方のこつを伝えるなどの工夫を凝らしつつ、価格を抑えて、高い人気を博しています。
同じようにモバイルオーダーに加えて、会計までモバイルで行い、個別会計の煩雑さを解消。DX活用がサービスレベルの低下ではなく、向上と認識させる取り組みを行う店も出てきたようです。 アフターコロナで外食は一律に回復したのではなく、変化した志向に合わせて進化したか否かで、大きく違いが出ているということなのでしょう。おそらく、DXの活用は多くの店も追随することでしょうが、早く取り組んだ店ほど、得るものが大きいのは間違いありません。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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