地元が連携し体験機会を創出
ある日本酒の酒蔵を訪問したとき、酒蔵ツーリズムを題材に話が盛り上がりました。盛り上がりの背景には日本酒をたくさんいただいたこともありますが、地域の活性化に対して大きく貢献できる可能性がある、もっと、各地で取り組みが加速するべきだと感じたからです。
ちなみに酒蔵ツーリズムとは、地元と酒蔵とが連携したアクティビティ=体験機会の創出のこと。具体的には日本酒、焼酎、泡盛、ワインなど地元にある酒蔵と、酒蔵解放や酒蔵体験、酒をテーマにしたイベント、スタンプラリーなどの仕組みづくり、外国人向けツアーのプロデュースなどを行うことです。お酒だけではなく、その地域ならではの郷土料理や伝統の体験と組み合わせることで魅力を高める取り組みとして注目は高まっています。
一例として、広島県東広島市西条の取り組みを紹介します。この地は酒蔵が並ぶ風情あるまち並みが特徴の銘醸地の一つであり、2008年には経済産業省から「近代化産業遺産群続33」に選出されています。
酒蔵では、お酒の試飲販売や蔵の見学、酒蔵を改装した飲食店の食事が楽しめますが、その1カ所で終わってしまうと、その地域での滞在時間は短いものになってしまいます。そこで、JR西条駅から1キロメートルの範囲に7社の酒蔵が集まっている「酒蔵通り」をボランティアガイドの案内で回る酒蔵ツアーや藍染め体験、日本酒を使ったスイーツを楽しむカフェ巡りなど1日以上楽しめるコンテンツが準備されています。
年間通じた集客へリピート増が重要
そもそも、秋に開催している酒まつりには、数日で20万人以上が参加する動員力を誇る実績がありますが、数日限りではビジネスとして成立しません。年間を通じてコンスタントに来訪がある状態をつくることが重要です。西条では年間2万人を超えるまでになってきたようです。ここまでくれば、ビジネスとして期待が膨らんできます。
ただ、2万人を超えるツーリズムにまで至っている地域はわずか。簡単ではないことが分かります。では、どうしたらいいのか。アクティビティのリニューアルや新企画の投入でリピートを増やすことが重要なポイント。さらにロイヤルカスタマーの声に耳を傾けて、魅力を高める努力をするべきです。
例えば、蔵元で熱心に質問をしている、旅の記憶を熱く語るコメントをアップしている人にコンタクトし、インタビューを実施。再訪したくなるような要望を聞いていくと、さらなる進化に向けたブラッシュアップのヒントが幾つも聞けるはずです。試してみてください。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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