高いデジタル技術を活用した商品・サービスを軸に、製造業向けにシステムを提供しているMountain Gorilla(マウンテンゴリラ)。自社開発した電子帳簿システム「カカナイ」を主力に、人材不足が進行する製造業界のDX推進支援事業が評価され、「DXセレクション2023」優良事例に選ばれた。
紙の帳票をオーダーメードで電子帳票に変換
マウンテンゴリラの事業の軸は三つある。①自社サービスである電子帳票「カカナイ」などの開発・販売、②AI・AR(拡張現実)・画像認識などの技術を活用したシステムの受託開発、③ITコンサルタント・エンジニアの派遣だ。社長の井口一輝さんは、「ツールやサービスだけでは製造業のDXは進みません。人もセットにして三位一体で事業を展開していきたい」と3軸を必要とする理由を説明する。
主力事業は、スモールスタートで製造業DXが始められる業務改善システムとうたう「カカナイ」だ。「カカナイ」は、製造現場が紙の帳票で行っているデータ収集・管理をデジタル化するサービスで、これまで使い続けてきた紙の帳票を単語や文言を変えずにそのままオーダーメードで電子化するため、現場は違和感なく切り替えることができるという。
一例を挙げると、ある大手の製油所では、タンクがあるエリアに作業員が入場するときに、入場申請書を書いて提出するという決まりがある。その提出場所はタンクエリアからは遠く、往復するだけで15分もかかる。そのため申請書を出さずに入場する人もいたようだ。そこで申請書を「カカナイ」に置き換えたところ、「タンクエリアから自分のスマホを使って簡単な操作で申請ができるようになり、移動時間が不要になりました。アカウント数の制限がないため、多くの作業員に利用していただいた結果、移動時間のような作業とは無関係な時間が年間500時間程度削減されました。このケースでの月額利用料は約3万円です」と井口さんは“コスパ”の良さを強調する。申請書を書くのが面倒という作業員がいなくなり、入場者全員を把握できるようになったことで、万が一の災害時の安否確認ツールとしても活用できる。
では、「カカナイ」はテレビCMなどでよく目にする「自社で簡単に帳票がつくれます」というクラウドアプリと何が違うのだろう。井口さんは、こう説明する。 「他社の製品はノーコード(プログラムコードを書かない開発)やローコード(少ないプログラムコードで開発)でできるとはいえ、導入側でDXチームを用意しなければなりません。でも、人手不足が深刻な製造業では難しい。また開発を顧客に委ねることは、開発コストを顧客に転換しているともいえます。『カカナイ』は専任のゴリラー(社内のプロ人材)が遠隔で代行作成するので、顧客側にDXチームがなくても早く安く運用ができ、ハードウエアの連携やデータの分析機能のようなオプションにも柔軟に対応しています」
先輩の受けがいい若手社員がキーマンになる
とはいえ、外部(ゴリラー)に任せるよりも、自社内で業務をよく知るチームがつくった方が、より使いやすいものがつくれるのではないだろうか。その疑問に対し井口さんは、「私たちは多くの会社の事例を持っており、使いやすいものをつくるノウハウを蓄積しています。お客さまにモック(システムイメージ画像)をお見せすると、自分たちが考えたものよりもこちらの方が使いやすいと驚かれますね」と自信を持って答える。
それでも紙の帳票をデジタル化する時は、スマホやタブレットに不慣れな人から反発が出ることがある。それを回避するためには、「最初に誰に使ってもらうかが重要なので、現場の先輩たちにかわいがられている若手のリーダー的な人に先行して使ってもらうといい」と井口さんはアドバイスする。スマホやタブレットに不慣れな人は、最初のうちは遠巻きに見ているが、便利な使い方を目の当たりにすると興味を持つ。その時、かわいがっている若手に対してなら「使い方を教えてほしい」と声を掛けやすいというわけだ。
製造業DXは、「紙をデジタルデータに変えて一元管理するところから入ると進めやすい」というのが井口さんの考えだ。デジタルが苦手な現場でも、それなら第一歩は楽に踏み出せそうだ。
わが社のDX推進成功のポイント
課題
・製造現場では紙の帳票を使い続けていることが多く、情報の共有や活用がしづらい
・報告書など紙の帳票は保管場所の確保が必要
・過去の帳票を探すたびに時間がかかる
DX推進のための工夫
・使い慣れた紙の帳票からオーダーメードで電子化した「カカナイ」の導入に変更
・オーダーメードだが、開発から導入、使用までの費用を月額制とし、月々2万円程度から利用できる
成果
・導入企業の1事例として、紙の申請書を電子化したことで提出にかかる移動時間などを年間500時間削減
会社データ
社 名 : 株式会社Mountain Gorilla(マウンテンゴリラ)
所在地 : 大阪府大阪市西区立売堀2-1-9 日建ビル6F
電 話 : 06-6657-5365
HP : https://mountaingorilla.jp
代表者 : 井口一輝 代表取締役社長
従業員 : 50人(2024年4月時点)
【大阪商工会議所】
※月刊石垣2024年5月号に掲載された記事です。
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