今年度のYEGフラッシュは、商工会議所(親会)とYEGの良好な関係をご紹介します。タイトルの「藍と青」は、渋沢栄一翁の生家の家業が藍農家であったことから、藍を親、青をYEGとし、一般的にいわれる師弟のことではなく、「君子曰く、学は以て已(や)むべからず(学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されて優れたものになる)」という本来の意味に立って取材します。
温暖で晴れの日が多いことから「晴れの国」と呼ばれる岡山県。その主要都市・岡山市では今、地元愛を表現する動きが活発だ。その活動のもり立て役となった岡山商工会議所と岡山YEGの過去と現在、そして未来の姿を探った。
「岡山市民の日」制定を提案
「岡山って地元愛が希薄だったんです」。そう口火を切るのは、現在、岡山YEG(以下、YEG)を担当している岡山商工会議所(以下、親会)の森健太郎副会頭だ。「大きな祭りもなく、“晴れの国おかやま”と呼ばれている通り、歴史的に見ても天災などが少なかったことも原因の一つかもしれない」と話す。これまで表立って地元愛を表現する機会がなかったのだという。
そこで年に一度、郷土・岡山への理解と関心を深め、愛着と誇りを育み、魅力あるまちづくりを進めるきっかけとなるよう制定されたのが「岡山市民の日」だ。今ではこの日に向けて地元愛を表現しようと、地域の皆が大いに盛り上がる。その運営にはYEGが深く関わっているというのだ。 さかのぼること12年前、都道府県愛着度ランキングで全国44位になるなど、岡山県民の地元愛が低いという課題に問題意識を持ったYEGメンバーが、岡山市へ「市民の日を制定しませんか?」と話を持ち掛けた。時の市長はそれを快諾。市制施行日でもある6月1日を「岡山市民の日」と定めた。なお、当時の市長・髙谷茂男さんは、現副会頭・髙谷昌宏氏の父親である。 制定に向けて賛同する団体と共に「6月1日岡山市民の日推進協議会」を発足。周知推進事業としてマラソン大会を立ち上げた。YEG単体では、マルシェの実施や川柳事業などを単年度で行い、市民の日をPRした。
後に、例年実施することとなり、大きな規模に成長した事業が「愛ラブおかやま川柳」だ。スタート当初に集まった川柳は1000~2000句ほどだったが、2022年には1万句、23年には2万句を超えた。数でいえば全国最大規模である。 川柳の募集、選定に際しては実行委員会を組織し、岡山市、教育委員会、女性会、さらには親会の担当者もメンバーに入ってもらった。その委員会を通じて各学校関係や女性会独自のネットワークを活用し、広報の幅を広げたという。今では小学校・中学校・高校・成人の部と年齢別に構成され、募集するジャンルは、観光・食・フリー(何でもあり)部門としゃれっ気が利いている。応募資格も岡山市が好きな人(市外在住者も含む)と幅広く、年末年始という募集期間も、帰省した人や冬休みの学生たちが大いに取り組める要因の一つだ。
応募された句の内容を見てみると、「晴れの国」「きびだんご」、新幹線が停車することなど、岡山での日常風景や、特産品の名称などが盛り込まれている。川柳を通して、地元愛にあふれ、地元愛が育まれていることが伝わってくる。
実行委員会が地元愛定着の鍵
YEGの古市聖一郎会長は、川柳事業の発足当時を振り返って語る。「立ち上げから数年は、地元愛を定着させるために何をしたら良いかが議論のテーマでした。YEGは単年度制のため、事業開始のタイミングによっては引き継ぎも厳しい。これを解消するために実行委員会を組織することにしました。毎年イベント内容が違うと定着しないという問題は、すでに単年度で行っていた川柳事業を深掘りして発展させました。そして、そこに行政を巻き込んですさまじいスピード感で実行する親会の力の大きさを実感させられたのです」。今では、YEGの集まりでも「ここで一句」と川柳で盛り上がるなど、継続事業としての定着感も出てきたようである。
また、森副会頭は、「YEGの実行委員は自分の仕事がある中で、川柳の応募用紙を持って各学校や事業所へお願いに上がり、集まった句は実行委員会で審査、フォローアップ、発表当日まで数多くのプロセスがある。このような実働がどうしても必要になるため、実行委員会メンバーは本当に大変だったと思う」と労をねぎらい、こう意気込む。「川柳に関して言うと、第一生命が毎年実施している『サラっと一句!わたしの川柳(サラリーマン川柳)』の応募数を抜きたい。いい目標になると思う」。さらに岡山を代表する食べ物「ばら寿司(晴寿司)」の普及やイベントの開催など、まだまだYEGが活躍できる可能性のある場は広がっているという。 「今、岡山YEGは会員数300人を超える大きい単会になっており、これをまとめようとすると何か一つ柱になるものが必要。YEGの先輩方が岡山市民の日を立ち上げた。このことが、岡山に誇りを持つきっかけになるのと同様に、川柳事業をYEGの会員として誇りを持てるものにしていきたい」と古市会長。会員数というスケールメリットを生かしながら、未来へとつながる事業にしていきたい考えだ。
つながりを生かせる実行団体へ
現在、森副会頭には例会に参加してもらい、親会との距離感はとても近く感じている。一方、親会にYEG出身の議員が増えていて、関係性は年々強くなっている。「会長が代わっても、継続事業として岡山市民の日があるということは分かりやすく、協力しやすい。親会の委員会にもYEG出身の人に入ってもらい、より連携しやすい体制だと思う。YEGの若い力で実行力を高めてくれると非常にありがたい。歴代の会長が議員になって、YEGとのつながりを保っているというのが岡山の特徴と思っている」と森副会頭。継続的に事業を進めていけるのは、親会とYEGとの相互性があってのことだと納得させられる。
「岡山市は人口70万人。不思議なくらいつぶれる企業が少なく、その子弟が継ぐ。古くからの人間関係の中で、将来継ぐであろう人がYEGに入り、親から聞いていることを考えながら活動している。若い起業家の皆さんにはつながりがあって、どこに行っても同じような顔ぶれ。良い意味では、近い関係の中で活動していける。YEG出身議員が増えると、親会からの応援をダイレクトに感じ、YEGとの顔が見える関係、預けてもらえる機会が増えていく」。そう優しいまなざしで語る森副会頭は、実はYEG出身ではない。「あえてYEG出身でない人を担当にしてもらったことで、良い距離感を保てている」と古市会長は感じるそうだ。
「商工会議所も、会議はするが実行に移すことがなかなか難しい時代があった。しかし、YEGが参画するようになって実行できる機会は間違いなく増えた。ギラギラしたYEGの皆がどんどん実行してくれることは大変助かる。YEGは実行してこそ。年度ごとに会長が代わるところがほとんどだと思うが、営業活動するがごとく、会頭と会長が話す場を設けるなどのコミュニケーションは必要」。森副会頭の熱い言葉どおり、岡山の地元愛が育んだ関係性と継続性が、親会とYEGをより密に結び付けている。
【岡山商工会議所】
会 頭 : 松田 久
設 立 : 1879年12月
会員数 : 7400人
住 所:岡山市北区厚生町3-1-15
スローガン:「稼ごう 守ろう 続けよう」
HP:https://okayama-cci.or.jp/
【岡山YEG 】
会 長:古市 聖一郎
会員数: 312人
創 立: 1993年4月
スローガン:「『E.S.R.』OKAYAMA」
HP:https://www.okyeg.org/
編集後記
猪原 英和(熊谷YEG) 「藍と青」をご覧いただきありがとうございます。 岡山YEGの取り組みはいかがでしたか。継続事業「愛ラブおかやま川柳」を一本の柱として活動し、その実行力を親会が評価して後押ししていくという関係性がとてもすてきだと感じました。 岡山市が好きな私にも川柳の応募資格がありそうなので、ここで一句。 「年パスで ぜいたく散歩 後楽園」 「桃太郎の 気分で配る きび団子」 「親と子の 絆はぐくむ 市民の日」
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報☆ブランディング委員会 石垣チーム/写真提供:岡山商工会議所青年部
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