複数の棚主で運営 家賃負担を分散化
書籍もネット通販で購入する人が増えて、書店の存在意義が著しく減少。急激なペースで閉店が進みました。書店のまちである東京の神保町かいわいでも閉店する店舗が増加。ところが、そのような動きと対照的に、新業態の書店が幾つかオープンし始めています。
その新業態というのがシェア書店。複数の棚や区画を複数の棚主がそれぞれ企画、編集、出品し、一つの書店を棚主みんなで運営する形の書店のことです。閉店に追い込まれる大きな要因である家賃を棚主みんなの負担として分散化することで、継続させる新たな手法として注目を集めています。 通常、棚主は出店料と販売した本1冊につき固定の手数料を費用として負担し、費用を除いた利益を受け取ります。店舗の運営を1日店長の形で棚主に任せる店舗も多く、その日は店長が自身の趣味やカラーを出して店舗を運営できます。
そんな注目のシェア書店を歴史作家の今村翔吾氏がクリエイティブディレクター・佐藤可士和氏のデザインで「ほんまる」と命名して神保町に開店。大きな話題となっています。私もこのシェア書店の本棚のオーナーになり、その動向に注目しています。
各地へも波及 書店復活に期待が
ちなみに本棚を借りて見えてきたのはこれまでの書店とのコンセプトの違い。今のところ、出店料に対して、得られる利益ではもうけは出ません。ただ、赤字額はわずか。その代わりに書店を通じたつながりを得ることができました。例えば、主催する今村氏とのつながり。あるいは同じように本棚を借りているオーナー同士のつながり。自分が選んだ本を購入していただいたお客さまとのつながり。こうしたつながりを赤字額と対比すると、得られることの方が多く感じるので、棚主は続けようと考えています。
また本選びを通じた自己PRをしたい人なども加えて、棚主希望者が増えており、シェア書店は東京だけでなく全国で増加傾向になっています。一例を挙げると、福島県のアルマティエ株式会社は書店がなくなってしまった地域にシェア書店のオープンを進めています。福島県では4割近い自治体が書店ゼロ状態。書店に行くことで新たな本との出会いがあった、書店に立ち寄ることで知的好奇心が高まったなど、存在による副次的な効果を期待して、書店復活を目指しているようです。
さらに書店に加えてカフェスペースやイベントスペースを増設して、つながりを加速させる仕掛けを行っています。こうした取り組みが全国に広がり、まちの活力が高まってくるといいですね。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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