ゾンビ先生は夏休み。妻子と共に訪れたのは福井県立恐竜博物館だ。恐竜王国福井とは、実は子どもの頃に縁があった。1989年に福井県勝山市でフクイリュウの化石が発掘され、当時、父親にねだって化石発掘ツアーに参加した。今回、30年以上ぶりの訪問である。
観光を考える時に重要なのは「物理的アクセス」「知識的アクセス」「感情的アクセス」というのが持論だが、福井県は恐竜というコンテンツを活用し、この三つのアクセスをうまくデザインしていた。
まず、同館では、恐竜という巨大コンテンツとの接続を実現していた。勝山市ではフクイリュウに続き、肉食恐竜のフクイラプトルや巨大草食恐竜のフクイティタンなども発掘された。それらの骨格標本などを堅実に展示しつつ、福井県で発掘されたものに限らず、大量の恐竜の骨格標本が見られる。展示の仕方も工夫されており、膨大で良質な情報に圧倒される。福井県を通して膨大な蓄積のある恐竜文化に接続できるのだ。
次に、動く恐竜ロボットや、フォトスポット、化石発掘体験、アニメ『かいけつゾロリの探検!恐竜博物館』の上映、今夏公開の映画『クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』とのコラボ展示などもあった。これらは博物館の展示にそぐわないと考えることもできるが、実際、恐竜はさまざまなメディア・コンテンツに登場してきたキャラクターであり、多くの人のイメージはそうした「恐竜」によってつくり上げられている。それを否定するのではなく、むしろ活用して「本物」へのアクセスをデザインしている点が出色だ。
感情的にも知識的にも充実のアクセスが体験できたわれわれ家族は、多分また福井県に物理的にアクセスすることになるだろう。こうした経験をした子どもは、成長したら家族を連れて再訪するかもしれない。福井県立大学は恐竜学部を新設すべく設置認可申請中だ。進化を続ける恐竜王国福井の今後が楽しみである。
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