ハイジ体験が人気 白馬の大型ブランコ
地域活性化につながる文化芸術、観光地、特産物といった観光コンテンツがない。新たにつくるとなれば、費用が相当にかかるが予算がない。どうしたらいいのか?
そんな悩みを聞くことがあります。地域で魅力的なコンテンツを新たに開発するのは簡単なことではありません。ただ、莫大な予算をかけず、知恵を絞って人気コンテンツが生まれたケースが幾つも出てきています。
一例が白馬の山頂に設置され、「白馬ジャイアントスウィング」と命名された超大型ブランコ。標高1100メートルに設置され、国内初の巻き上げ式ブランコでスタートから勢いよく飛び出します。地面から10メートルの高さがありながら、最大で前方約6メートルの振り幅を得られます。眼下に広がる白馬村の田園風景に飛び込むような非日常の浮遊感=「アルプスの少女ハイジ体験」を誰でも楽しむことができると話題になり、夏のスキー場に例年の8倍以上の来場者があったとのことです。
ブランコ設置にかけた費用は正式には発表されていませんが、このブランコ企画に関わった知人から聞いたところによると、それほど大きなものではないそうです。
人々の関心の高い 素材を見つける
現在では観光コンテンツの成功例として注目度も高く、全国各地からの視察も相当にあるとのこと。その結果、同じようにスキー場の頂上でブランコを設置する動きが出てきているようです。
ここで気になるのが日本中の山頂にブランコができること。こうなると、観光する立場としては食傷気味になるだけ。その場所に行かないと味わえないという希少性が失われれば、人の動きにはつながりません。「ここだけ」と言い切れる地域素材をベースに個性豊かな観光を考えていくことが重要です。白馬であれば北アルプスの山々が生み出す絶景こそ「ここだけ」の観光素材。その魅力を十分に体感いただく手段としてブランコにたどり着きました。各地には各地の「ここだけ」があるはず。違った切り口で個性豊かな観光コンテンツが生まれることを願います。
ただ、「ここだけ」が見当たらない、だから悩んでいるとの意見を聞くことがあります。素材が見つからないということなのでしょう。ならば、自治体などがよく企画する観光PRイベントを活用してみてはどうでしょうか。たくさんの人々が観光素材に触れたときに地元視点だと見逃していた「ここだけ」が見つかる可能性があるからです。
各地で観光PRイベントが行われていますが、地元が推す観光素材に縛られずに、興味・関心が高い素材を見つける機会にしましょう。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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