YEG Common ~心通い合う繋がりを結び、新たな未来的経済価値を創出する~
2025年度日本YEG会長 小野 知一郎(おの ともいちろう)
会長所信
永続的に続くバトンを手渡していく上でのテーマ
君主制を採り、同じ王朝が継続している国は意外に少ないもので、日本はその最古の国です。神武天皇が即位してから数えて、西暦2025年時点で2685年となります。大陸にある隣国の方が永いと誤解する方もいますが、日本の次はデンマークで千年以上の歴史がありますが、それでも日本のおよそ半分。永ければいいというわけではないですが、途切れることなくバトンが手渡される事実には、集団や組織が一つとなり世代を超えても変わらないための本質を語る理由があると言えるでしょう。
100年を超える企業の数も22年時点において3万7000社を超え、比率は世界の50%以上となりました。ここまで長寿企業が多い半面、日本企業の10年存続率はなんと約6・3%と、1割にも満たないと言われています。地域も、経済も、経営も、もう来年には終わってしまっていいと考える人はおそらくいないでしょう。“できることならば、子の世代、あるいは孫の世代まで倖せな暮らしや豊かな社会が続いてほしい”そう念(おも)うのは、人間としての本懐です。
しかし、先に述べたように、そう簡単にいかない最大の理由は、「永続」の2文字を目的として定めないからにほかなりません。続いてほしいと希うにもかかわらず、目的が売り上げ、経済の発展、観光集客などになっているケースをよく目にします。これらはあくまで手法の一つであり、その要素が統合的に組み合わされ、より永く続く(永続する)確率を高めます。すなわち、最終的な目的(向かうべき道筋の旗)を「永続」の一点に置くことにより、それに必要なあらゆるテーマが収斂(しゅうれん)され、正しい一つの方向へと導かれるのです。
なぜ、多くの地域が残らないのか。確かに人口減も要因の一つではあるかもしれませんが、本質的には「永続を軸とした、未来に向けた取り組みが、その地域から起こらないこと」こそが最大の理由です。日本の未来に向けて、地域の企業経営が一つの指針の下、新たな繁栄の在り方へと移行する時代。どうすれば永続の確信を得ることができるのか。その一点へと向かうための、強い日本YEGを志します。
未来を見据えて地域を支える 日本YEGであるために
日本が人口減少社会へと転換して、おおよそ20年。近代資本主義における「経済成長」という概念は、生活の羅針盤として機能しない時代に入りました。「経済性・利便性・合理性」|これらを追求し続けた結果、何が価値として残り、どのような課題に対して取り組むべきかを再定義する必要があります。よく耳にする生産年齢人口の減少や、デジタル化の遅滞という、社会的課題をどう解決すべきなのかという側面も重要ではありますが、その解決自体が地域の経営、あるいはわれわれの暮らしが根本的な解決へと向かう道筋なのでしょうか。
われわれが現在、最も視点を定めるべきは、“どのような価値観を共有化していくのか?”という点にあります。そして、その問いの軸として、「企業は地域の公共財である」という旗を掲げる必要があるのです。とてもシンプルな自問です。“自分たちの地域に、子どもたちは果たして帰ってきたいと念うのだろうか?”その問いに、全てが収斂されます。『YEG Common』とは、各地域のYEGが、自分たちの地域を、自企業を自分たちでより良くしていく。人々が訪れたいと念える場へと変えていく。そして、そのために必要なあらゆる支えを、日本YEGが推進、伴走していくという意味が込められています。
中小企業は、社長のものでも、株主のものでもなく、地域の公共財の役割も果たしている。その視点に立った時、やるべきことは明確に定義され、新たな航路を示してくれます。
日本YEGは、組織や活動を柔軟に変えながら、時代が求める言葉を発信し、会員である全国数万の中小企業の灯台として機能してきました。25年度もこれからの日本の未来の輪郭を想像しながら、地域経済を循環させ、地域の暮らしを支えるために存在しなくてはならないのです。