日本商工会議所は4月17日、意見書「地域経済の好循環を支える中小企業・小規模事業者の『稼ぐ力』の強化に向けて」を取りまとめ、公表した。同22日には、日商の立野純三中小企業委員長が中小企業庁の山下隆一長官に意見書を手交。内容の実現を強く求めた。
意見書では、わが国は成長型経済への移行、経済好循環実現の好機を迎えており、その原動力は、「中小企業の収益改善、従業員などの所得向上」と疲弊する「地域経済の再活性化」であると主張している一方で、地域中小企業の多くが人手不足に起因する労務費増などに直面し、業況の二極化が顕在化している現状を指摘。賃上げや投資の原資確保に向けた生産性向上や付加価値拡大への支援強化、取引適正化に向けたビジネス環境の整備が急務との認識の下、意見書に掲げる政策や支援の強化・拡充などを強く求めている。
具体的な意見項目としては、①人手不足などに直面する中小企業などの付加価値拡大への挑戦支援②価格転嫁など、取引適正化に向けたビジネス環境整備③地域への投資拡大など、地域経済の再活性化支援――の3本柱を提示。①では、成長志向型の中小企業の成長に向け、経営者の自己変革への挑戦を後押しする必要性などを指摘し、生産性向上・イノベーション創出に向けた設備投資への支援拡充、成長資金を柔軟に調達できる環境整備などを求めているほか、地域に価値ある事業の継続・発展に向け、「事業承継税制の特例措置の恒久化」をはじめ、税財政措置の拡充の必要性を指摘している。
②では、「取引適正化の推進は、賃上げのみならず、中小企業が生産性向上や付加価値の創出・拡大に取り組むための原資を確保するためにも不可欠」と主張。パートナーシップ構築宣言のインセンティブ拡充など取引環境の整備や、社会全体の価格転嫁の商習慣化定着に向けた取り組みなどを要望した。
③では、地域経済の再活性化に向け、地域ビジョン策定に向けた面的支援など、民間主導・公民共創によるまちづくり体制の強化や、需要喚起・消費拡 大に資する地域ブランディング促進支援などを要望。また、中堅・中小企業による投資を促進するため、拠点整備に必要な規制緩和やインフラ整備の促進などを求めている。
意見書を受け取った山下長官は、「デフレ経済から金利のある世界へと変わる中、過去の延長線上には解がないため、経営者はこれまでと軸を変える努力が必要だ」と指摘。その上で、「経営者に頑張ってもらえるように、できる限り支援することが大事だと思っている」と述べ、意見書の方向性に理解を示した。